「男尊女卑」のイスラム教国家は大繁栄を続けている

藤沢 数希

日本に住んでいると、イスラム教というのはまったく身近な存在ではない。しかし、ヨーロッパなどを旅行すると、ケバブ屋などの学生でも楽しめる安くて美味しいレストランは、だいたいはトルコなどから移民してきたイスラム教徒(ムスリム)がやっている。そして、今後、人口が急速に増え、世界経済を牽引していくといわれる南アジア諸国や北アフリカの国々はイスラム教の国だ。また、経済的に非常に豊かな中東の産油国も、すべてイスラム教の国である。現在、世界人口の約28%がムスリムであるが、早晩、世界の人々の3人に1人がイスラム教を信仰することになる。

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多くのムスリムが温和で平和を愛する人たちであり、テロリスト集団である「イスラム国」とはまったく関係ない。欧米諸国では、すでに多くのムスリムが社会に溶け込んでおり、とても身近な存在である。そして、彼らの人口は、すごい勢いで増え続けており、逆に、先進国のキリスト教徒の人口は減り続けている。アジアの先進国である日本やシンガポール、香港も出生率が非常に低く、やはり人口は減っている。ムスリムとはとても対照的だ。

イスラム教徒人口上位10カ国

出所: https://en.wikipedia.org/wiki/Islam_by_country

主なキリスト教先進国とアジアの先進国の出生率

出所: https://www.cia.gov/library/publications/the-world-factbook/rankorder/2127rank.html

このように、普及率で見れば、イスラム教は明らかに勝者である。そして、彼らの考えは、西洋諸国の価値観とは相容れない部分がある。たとえば、一夫多妻制だ。イスラム教の経典であるコーランには次のような記述がある。

汝が孤児に対し、公平にしてやれるならば、よいと思う2人、3人ないし4人の女を娶れ。だが公平にしてやれそうにもないならば、只1人だけ娶るか、汝の右手が所有する者(奴隷の女)で我慢せよ。

コーラン 第4章3節

イスラム教の国では女性の不貞行為は重罪である。しかし、力のある男性は4人までの妻を持つことが許されている。これは著しく男女不平等であり、男尊女卑の考え方に思われる。しかし、イスラム教の国では、男性は、妻の生活を生涯にわたってめんどうを見ないといけないとされている。また、4人の妻は、必ず公平に扱わないといけない。それができないならば、1人だけを娶れ、と教えている。昭和の時代の日本にも、同じような価値観があったのではないか。また、この教えは、富める者が、戦争孤児の女を娶って救済してあげなさい、ということでもあった。いずれにせよ、女性は、(力のある)男性に尽くし、子を生み、育てるという役割が、良くも悪くも社会の中で決まっているのだ。

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反対に、西側先進国では、男女平等は絶対的に正しい価値観である。女性も男性と同じように働くことができなければいけない。女性が、男性に「尽くす」という考え方は、根本的に否定されるべきであり、筆者もその価値観に100%同意する。性差別は決して許してはいけないからだ。しかし、こうした男女平等の社会では、その原因は定かではないが、出生率が著しく下がり人口を維持できなくなるのだ。キリスト教先進国で出生率を押し上げているのも、移民してきたムスリムたちである。

こうした問題の解決策は、フランスや北欧諸国の政策がとても参考になる。これらの国では大臣の半数が女性であり、政治でも女性が強い力を持っている。子供ができたら、十分な補助金が政府から付与されるため、3人も子供を産めば、女性はそれだけで十分に生活できるほどだ。こうした環境では、女性は、生活のために好きでもない男とセックスする必要もなく、真の意味で、男女平等が実現しているのだ。シングルマザーで、父親が違う子供たちを育てているのはふつうのことで、まったく社会に受け入れられている。

●男女格差を失くすと豊かな一夫多妻的な社会になる
http://blog.livedoor.jp/kazu_fujisawa/archives/52092356.html

イスラム教国家も、ある意味では、女性を尊重している社会と言えるのかもしれない。こちらは、政府ではなく、金持ちの男性が女性を養うことになる。そして、一夫多妻というのは、別の見方をすると、魅力のある金持ちの男性を、多くの女性でシェアしている、と見ることも可能だ。こうした考え方に立てば、ちょっと不倫したぐらいの女性タレントをバッシングする、偏屈な価値観に凝り固まっている日本という国こそ、はるかに女性蔑視で、男尊女卑と言えるのではないか。これでは少子化が進むのも無理はない。

今週のメルマガでは世界の宗教の趨勢を縦糸に、そして、男女の恋愛模様を横糸に、新しい夫婦、家族の形を考えてみたい。

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編集部より:この記事は、藤沢数希氏のブログ「金融日記」 2016年10月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「金融日記」をご覧ください。