トランプVSクリントン、今度はジョークで火花を散らす

安田 佐和子

米大統領候補が3回の討論会で熱戦を繰り広げた後は、こちらでジョークをぶつけ合うのがアメリカ流。

というわけで、今年もカトリック慈善団体のための年次チャリティ・イベント「アルフレッド・E・スミス記念晩餐会」が開催されました。政界、経済界などVIPが一同に会するディナーで、今年も昨年と同じくウォルドーフ・アストリアのボール・ルームが舞台に選ばれました。

NY州知事を4期務め、カトリック教徒で初めて大統領候補となったアルフレッド・E・スミスNY州知事の功績を称え設立され約1,500人が出席したこのイベント。昨年は、オバマ米大統領と共和党の米大統領候補だったマサチューセッツ州元知事のミット・ロムニー氏が互いにジョークで場内を沸かせたものです。

今年は、随分と勝手が違いました。暴れん坊の不動産王、ドナルド・トランプ氏が共和党の米大統領とあって、周囲のムードを破壊する勢いで独壇場を演じてくれたのです。

男性はモーニング、女性はドレスと正装でご出席。


(出所:AFP via Straits Times

例えばウィキリークスでクリントン候補が挙げた副大統領候補39人のリストをもじり、「ヒラリーは晩餐の前に懺悔するため神父に会ったんだけど、どんな罪を犯したのか把握するのに苦労したんだ。だってヒラリーは39回分を思い出せないんだから」。その後、「堕落してるね!(corrupt)!」と大声を張り上げたといいます。

トランプのジョークは、流れる川どころか滝のごとし。またまたウィキリークスで暴露されたメールをもじり「(選対部長の)ポデスタ氏がメールを招待状を送信してないと勘繰ったから、ヒラリーが来るか定かじゃなかったんだよ。あるいは送信済みで、ヒラリーはウィキリークスの中で招待状を見つけたのかもしれない」と攻撃の手をゆるめません。ブーイングの嵐に包囲されながらも、ひるむ様子はまるでなし。むしろ、クリントン候補が第3回の党論会であらためて女性の権利を重んじる中絶支持派の立場を表明し、トランプ候補自身は反対の立場を明確化した事情を踏まえ「(参加者が)どっちに怒ってるかよく分からないな。例えばヒラリーは公衆の面前でカトリック教徒が嫌いじゃないふりをしている」と中傷を続けたものです。

オハイオ州での選挙集会に登場した際に、トランプ候補は「自分が勝利すれば」米大統領選結果を受け入れると発言しましたよね。この場では、言及を避けました。

クリントン候補も、負けていません。3回にわたる討論会を振り返り「ドナルドは私にスタミナがないと言うわよね。討論会は全部で4時間半に及んで、いま私はドナルド・トランプとの横に立ってるけれど彼の選挙スタッフより長く傍にいるんじゃないかしら」と、辛辣です。トランプ候補が選挙スタッフの忠告を聞かず赴くままに振る舞い続けた結果、本選まで90日を切った局面で選対本部の最高責任者などを入れ替え、支持率も頭打ちになった事態を皮肉っています。さらに8月に本部長に就任した統計専門家のケリーアン・キャロウェイ氏を挙げ「四六時中ドナルドの傍にいるんだろうけど契約社員だから、きっと給料を払わないわ」と切りつけました。

張り詰めた米大統領選中で、束の間の休息となるチャリティ・イベント。両者は互いを槍玉に挙げましたが、少なくとも握手で別れたので討論会ほど戦闘モードでなかったことは救いですね。その他のジョークは、こちらでご覧下さい。

ちなみに秋の真っ盛りに開かれる晩餐の参加費は、3,000~1万5,000ドル也。米大統領候補がこれだけジョークを飛ばしてくれれば、元は取れたというもの?

(カバー写真:AFP via Straits Times


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年10月21日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。