1.トランプの元ネタ?ハワード・ディーン
2003年、翌年に迫っていた大統領選挙に向けて米国民主党のハワード・ディーンという元ニューイングランド州知事が大きな話題を集めました。
彼ははじめ、いわゆる「泡沫候補」でした。
しかし、いち早くイラク戦争におけるブッシュ政権の方針を批判し、公的支援金(PublicFund)をも受け取らず、インターネットでの献金で250万億ドルを集めて党内レースのトップに立ちました。
ところが彼はアイオワ州党員大会でジョン・エドワーズやジョン・ケリーといったライバルにかわされ、3位の結果になってしまいました。
負けずに頑張ろうと残りの州名をあげて「おらーぜってー負けねーぞ」と絶叫する姿をメディアは4日間で600回以上も取り上げて冷静さに欠ける人間との烙印を押しました。
その結果、彼は党内レースから脱落にまで追い込まれることとなってしまいました。
ネットの寵児がテレビにやられてしまったのです。
ハワードとトランプ。
党派も異なる二人には共に言葉がどぎついという共通点と微妙な相違点があります。
2.ハワードとトランプ
今から振り返れば明確な問題発言をしたわけでもなんでもなく、ただ、表情とか声色が異様だっただけの「舌禍」で失脚したハワード。一方で明らかな問題発言を何度しても不死鳥のように復活し、共和党候補、ヒラリーとの接戦までたどり着いてきたトランプ。
両者を分かつものは何だったのでしょうか。
ハワードもトランプも、同じようにそれぞれの党における「泡沫候補」からスタートしましあ。
ハワードはネットの献金に頼りましたが、トランプは9月末までの資金の4分の1程度(約5610万ドル)を自己資本でまかないました。
ハワードはイェール大学卒業の元医師、トランプはペンシルバニア大学卒業の経営者。
実は日本の知識人が軽々に「奴らは反知性的である」とは言えないクラスの学府での薫陶を受けてきています。
その割に過激な発言を繰り返すのが彼らの魅力になっています。
トランプは言うまでもありませんが、ハワードも負けていません。第1回目の大統領候補討論会を終えて、ハワード・ディーンは「(トランプがよく鼻をすすっていたのは)コカイン常用者だからか?」とTwitterに投稿し、謝罪する気も投稿を削除する気もないと開き直りました。
3.逃げ切ったのはどちらか?
同族嫌悪も党派の違い?もあって2人は相容れない存在同士であるのでしょうが、かつてのハワードに関心を持っていた筆者は、かつてのハワードをほうふつとさせ、さらにその上を行くようなトランプ旋風を見ていて、この現象がどこに行き着くのか、大変興味を持っていました。
大統領選終盤では、Netflixの人気ドラマシリーズ「ハウスオブカード」を彷彿とさせるトランプ、ヒラリー陣営の水面下での工作の応酬も見られました。
トランプがFBIのコミー長官に工作をしかけヒラリーのメール問題操作再開に持って行った可能性があることを指摘してトランプを批判する人々がいますが、それを言うならば、どう見てもアメリカのメディアはヒラリー優位の報道を続けており、裏でヒラリーが何かしている可能性だって大いにあるわけです。
「ハウスオブカード」はドラマですが、大統領という超大権力をめぐる争いは善悪を超えた工作の応酬、力の押し引きをはらむことを覚えておいて損はないでしょう。
そして、そんな熾烈なる力の押し引きの結果。
大統領選挙開票日直前でのヒラリーの捜査終結の報を受けたトランプ陣営、ヒラリー陣営。
「逃げ切った」
そのつぶやきを漏らしたのは、果たしてどちらの陣営でしょう。
「開票日前に捜査が終わってくれてよかった」
なのか、
「開票日ぎりぎりまで捜査が続いてくれてよかった」
なのか。
結果はまもなく明らかとなります。
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水谷翔太( Shota Mizutani)
前大阪市天王寺区長
株式会社Field Command’s Triumph CEO
内閣府地方創生推進事務局 地域活性化伝道師
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