米大統領選挙の投票が終り、さてこれから開票、という11月9日の朝、思いがけないところから「掲題記事を読んで感想は?」というボールが飛んできた。確かにエネルギーアナリストを名乗っている者にとっては、米大統領選よりも重要なニュース(”Oil demand might peak in just over a decade, says OPEC” around 5:00am on Nov 9, 2016 Tokyo time)だ。
さっそく読んでみた。
もっとも重要なポイントは次のとおりだ。
・OPECは、毎年発表している中長期エネルギー予測のシナリオの一つとして、自動車燃料の代替(ガソリン、軽油から電気へ)がより早く適用され、気候変動対応政策が積極的に導入された場合、これまで一世紀以上も伸び続けていた石油需要が15年以内にピークを迎えるかも知れない、としている。
・シェルも先週、同様の見解を述べていたし、パリ協定が実行に移され、自動車燃料の代替が促進され、各国政府が石油需要を減少させようしていることから断言できる予測だが、世界の3分の1以上の供給を担っているOPECが公式に認識を表明したことの意味は重要だ。
・このOPECシナリオでは、経済援助が必要な貧困国を含め各国が予定とおり気候変動対応策を取る前提で、石油需要は2029年には1億90万B/Dでピークとなり、2040年には9,830万B/Dとなる。なお、2016年は9,440万B/D(各機関により前提が異なるので、現在の消費量についても数字が同一ではない。予測を読むときには、ベースとの対比が重要)とみている。
・メインシナリオは、温暖化対策が緩いならば、石油需要は2040年以降も伸び続けるとみている。
FTが参照しているOPECの今年度の長期予測とは、昨11月8日、アブダビにおけるコンフェランス(Abu Dhabi International Petroleum Exhibition and Conference)において、 “World Oil Outlook 2016” として発表したものだ。本文は400ページ以上あるが、ハイライトが掲載されていたので、その要点を次のとおり紹介しておこう。
・世界の一次エネルギー需要は2040年までに40%増加する。
・そのうち53%を石油・ガスが供給する。
・2040年までの世界経済の成長率は年率3.5%。
・石油需要は、2021年9,900万B/D、2040年1億900万B/D。
・需要増は、道路輸送+620万B/D、石油化学+340万B/D、航空輸送+280万B/Dが中心。
・非OPECの石油(liquid)供給は、2015年5,700万B/Dから、2017年5,600万B/D、2021年5,850万B/D、2027年6,150万B/D、2040年5,900万B/D。
・OPEC原油への需要は、2040年に4,100万B/Dとなり、石油供給に占める比率は2015年の34%から37%に増加する。
あれ?
FTが指摘している需要ピークを含んだシナリオについてはいっさい触れていないな。
ハイライトで記載しているように、この中長期予測は、(OPECとして)予測を行うものではなく、関係者が討議するための必要な参考ツールだ、ということが重要なのだろう。
だが今回、需要ピークも「参考」にする必要が生じた、とOPECが初めて公式に認識していることは重要だ。FTの指摘のとおりだ。
ところでOPECは、価格動向についてはどう見ているのだろうか。触れていないのかな?
本文を読んでみる必要があるなぁ。
編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2016年11月9日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。