永田町の想定外だったトランプ大統領誕生

イギリスではEU離脱が国民投票で確定し、フランスでは極右政党が勢力を大きく伸ばし、イタリアではデジタルデモクラシーを標榜しながEU離脱を訴える新興政党が首都の市長選で圧勝する。

これだけ内向きの政策が各国で人気を博す中でも、人(特に日本人)は「X国の人はそんなドラステイックな選択はしないだろう」と、深く考えずに思い込んでしまう傾向があります。

私もその一人です。だからこそ「その逆もありうる」と常に考え癖をつけるようにしています。

今回の米国大統領選も「ドナルド・トランプ氏が大統領?ありえない!」というのが大方の見かたでした。特に永田町ではほぼ全員が、ヒラリー・クリントン氏が勝つと信じていました

私が今年33の予算委員会(参院)で議員として初めて「トランプ氏が勝利し、日米関係が変化する可能性について安倍総理に質問したはクスクスと失笑する声が聞こえてきたものです。正直言って私もクリントン氏が勝つだろうと思っていましたが、逆の可能性を排除しないという観点から政府の意識を問い質したのですが、残念な答弁しか得られませんでした。

(こちら、当時のブログ記事をお読み下さい → http://ameblo.jp/koutamatsuda/entry-12135486123.html )

自分たちの想定が正しいと思い込んでいる事は、安倍総理が9月下旬の訪米中にクリントン候補のみと会うというスケジュールを組んだことからも伝わってきました。クリントンから要請があり、トランプからは無かったからなのかもしれませんが、あのタイミングで片方の候補とだけ会う選択は無かったと思います。会うなら、短時間でも両方と会うのが正解です。(上記のブログにも書いてありますが)ましてや私の質問に対して「トランプとは過去に面談したことがあるかどうかさえ、選挙に影響を与えるので言えない」と言っていた総理なのです。(どんだけ影響力があるんだよ、と当時は思ってしまいましたが…汗)

それを今さら取り上げて「大問題だ!」とまでは騒ぎませんが、リスクマネージメントの脆弱さには落胆してしまいます。これから信頼関係を構築していけば良いことですが、候補者時代に相手陣営とは会って、自分たちとは会わなかったというのは、選挙を戦ったことがある人なら根深く記憶の中に刻まれてしまうことぐらい分かるはずです(因みに私はまったく気にしないタイプですが(笑))。特にあの会談は、完全にクリントンの選挙に使われただけですから。

これから一週間で様々な選挙分析がマスコミでも報道されるでしょうが、それは結果論に過ぎません。大事なのは、様々なことを想定して準備をすることなのです。原発事故(東海村JCOやもんじゅも含め)や自然災害時の対応でも同じことを繰り返さないために「想定外仕方が無い」という意識を捨て去る必要があるのです。

ところで、

トランプ大統領下で起こりうることとして質問した「自衛隊派遣を気軽に要請される」ような事態になっても、が安保法制時に発案して与党と合意に至った「修正」があることによって「国会を通すプロセスが必要」とワンクッション置くことができるはずですが、それがまだ法制化されていません。

実際にそうなってから想定外だと騒いでいる姿が容易に想像できてしまいます。

早急にしっかりとした形にして法律の中に書き込んで頂くことを強く提言したいと思います。


編集部より:この記事は、タリーズコーヒージャパン創業者、前参議院議員の松田公太氏のオフィシャルブログ 2016年11月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は松田公太オフィシャルブログをご覧ください。