マネジメントに求められるリーダー像はどのような姿だろうか。一般的にリーダーと聞くと体育会系の猛禽類のようなリーダーを思い浮かべることが多い。しかし、現在は温和な草食系リーダーが求められているとのことだ。
今回は、人材育成のスペシャリストとして活動している中武篤史(以下、中武)氏に、最近のリーダー育成のトレンドについて伺った。
■組織全体を見渡せて行動できる人が理想
リーダーと聞くと、「指導者、統率者」をイメージする方が多いだろう。しかし「指導者、統率者」というのは部下からすると高圧的に見えてしまうことが多い。中武は「正しいことを伝えるだけでは不充分です」と次のように述べる。
「例えば、登山の際にチームがトラブルに巻き込まれて身動きがとれない状況になってしまいました。チームがパニックになりかけています。リーダーが『速く歩かないと大変なことになるぞ!早くしろ!バカヤロー』と怒鳴ってもメンバーの士気は上がりません。もちろんトラブルからも解放されることもありません。」(中武)
たしかに、パニックに陥いると怒鳴りちらかすリーダーは多い。
「リーダーは、言葉と行動の重要性を認識しなければいけません。トラブルが発生した際に、『ここから30分以内に山小屋があります。まずはそこを目指しましょう。30分歩いて山小屋が見えなかったら、風の少ないところにテントを張りましょう』と、まずは冷静な振る舞いが必要になります。」(中武)
「さらに発電機、カイロ、断熱防水マットがあれば心配はいりません。まずは落ち着きましょうとチームに安心をもらたす言葉と行動が必要です。」(同)
このケースであれば、全体の状況を俯瞰しなければいけない。「エネルギッシュ」「自らの行動を背中で見せる」「部下を強く厳しく指導する」など、リーダーの姿は様々だが、緊急事態の際には冷静さと安心をもたらすことが必要だ。
■草食系リーダーとはどのようなリーダーか
そして、中武は「草食系リーダー」の必要性を述べる。どのような姿なのだろうか。
「草食系という言葉は人間のタイプを表す造語です。一般的な草食動物としてイメージされている事柄が性格や行動に当てはまった人を指しているのです。その辺りを踏まえると、草食系リーダーのスタイルが分かってきます。」(中武)
「草食系リーダーとは、他人に対して自らが影響力を発揮するより、まわりのメンバーの知恵や知識を活用できるリーダーのことです。変なプライドもありませんから『部下の力を借りてまでそんなことできるか!』という抵抗もありません。」(同)
仕事が上手くいくことに集中する姿勢は草食系リーダーならではの技術なのだろう。今まで以上にチームを成功に導くことができる姿なのかも知れない。では、草食系リーダーに必要な要素はなんだろうか。
「日々のマネージメントで“ほめる、叱る”はできることだと思います。ところが“諭す”はあまり使いません。諭すとは『よくわかるように言い聞かせること』です。『教え導くこと』ですから、相手に理解させて納得させなければいけません。諭すことを理解するには時間が掛かるものです。ですから即効性を求めないことも大切です。」(中武)
企業は人材育成に即効性を求めることが多いが、比較的長いスパンで信じて待つ姿勢が必要かも知れない。リーダー育成は企業にとって関心の高い領域だが、あなたのスタイルは、肉食系、それとも草食系だろうか。
参考書籍
『いま、求められる「草食系リーダー」のための“や・わ・ら・か・指導術”』
尾藤克之
コラムニスト
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