ドナルド・トランプ次期大統領が選ばれたわずか2日後の11月10日、「ラスト・ステイト(錆びた州)」の盟主、GMなど自動車メーカー連合は、トランプ氏にシリコンバレーに挑戦状を叩き付けるよう、嘆願書を発送しました。
GM本社のあるミシガン州デトロイトは、労組の力が強い民主党の牙城でしたが、自動車産業の衰退が進み、街はスラム化、今回ばかりは共和党のトランプに寝返り、近隣のペンシルバニア・オハイオ・ウイスコンシンなどと併せて、トランプの雪崩を打った大勝利の立役者となりました。
その挑戦状の中身はというと、中北部のオールドエコノミー(トランプ推し)と西部のニューエコノミー(ヒラリークリントン推し)との分かりやすい対立を現していて、要約すると「カリフォルニア州が余りに性急に電気自動車(EV)を推進しているのはアメリカの国益に反するので止めさせて欲しい」。解説します。
米国カリフォルニア州大気資源局(CARB)は、同州内で一定以上の台数を販売する自動車メーカーに対して、決められた比率をZEV(Zero Emission Vehicle=排ガスを出さない車両)規制」にすることを義務付けています。現状ではプラグインハイブリッド車(PHEV)やハイブリッド車(HEV)などもZEVの仲間に入れてよいことになっていますが、2018年からはEVと燃料電池車(FCV)だけが対象になり、PHEVやHEVをカリフォリニア州で売ると罰金を払わなければならなくなります。新型トヨタプリウス・プラグインハイブリッドも「環境に優しくない」との理由で罰金の対象です。確かに、ちょっとやりすぎな感じがしますよね。
言って見れば、真面目な町の商人(GMやトヨタやベンツ)が環境に優しいプラグインハイブリッド車を一所懸命売っていたら、「悪い越後屋」(TeslaのイーロンマスクやEV一辺倒の日産)にそそのかされた「悪代官」(民主党とカリフォルニア政府)が、町人に無慈悲な「ハイブリッド禁止令」を出した。困り果てた町人がみんなで「遠山の金さん」(トランプ)に泣きついた。そんな構図でしょうか。トランプ金さんがこう言うことを期待して。「やいやいやい、カリフォルニアの金持ちども。いたいけな中北部の下流白人をいじめやがって。しらばっくれるんじゃねー。このトランプ桜がトーンとお見通しでえ。覚悟しとけ。」
いやー面白くなってきました。これからトランプ率いる連邦政府と、環境意識が高く、テックに傾注するシリコンバレー擁するカルフォルニア州政府のガチバトルが見られます。カリフォルニア推しの参謀役、環境原理主義の西欧、特にドイツがどう参戦するかも見物です。
トランプ劇場、早速盛り上がってまいりました。現場からは以上です。Nick Sakai ブログ ツイッター