日本ではほとんど関心を呼んでいないCOP22、モロッコのマラケッシュにおける気候変動に関する国際会議の場で、サウジアラビアのファーリハ・エネルギー相がFTとのインタビューで興味深い発言をしている。”Saudi Arabia set to reveal depth of oil reserve” (around 14:00 on Nov 16, 2016 Tokyo time) という記事だ。
ファーリハはサウジの代表団を引き連れてCOP22に参加しており、FTが独占インタビューに成功したとのことだ。
筆者の興味にしたがい内容を紹介すると、次のようになっている。
・サウジは、サウジアラムコIPOの準備を行っており、埋蔵量についても明らかにすべく作業中。
・ファーリハは「史上もっとも透明な国営石油の上場となる」という。
・サウジの埋蔵量については、1980年代に米国(企業)が支配していたアラムコ社の国営化を完了して以来、一貫して約2,600億バレルとされてきた。
・だがこの数値は長いあいだ、検証ができない国際石油産業の関係者や投資家たちにとって疑惑の源泉だった。
・ファーリハは「サウジアラムコが所有するものはすべてシェアーされ、独立した第三者によって検証される」とし、財務諸表や「埋蔵量、コスト、利益性指標」が含まれるという。
・もし政府の公表データが正しいとすれば、毎年生産し、消費している原油の量と同量の原油を、新規油田の発見か既存油田の回収量向上により代替(replace)することに成功し続けていることを証明することになり、極めて重要な情報だ。
・先月のサウジ国債発行趣意書の中では、第3者の検証は受けていないが、同国は70年間生産を続けることができるとされていた。この情報は、サウジが実際何年間生産を継続できるかを示すことになり、石油市場に影響を与えることになるだろう。
・埋蔵量そのものが売りに出されるわけではないが、当事者が約2兆ドルといっているサウジアラムコの価値査定に大きな影響を与えることになろう。
・サウジアラムコの会長でもあるファーリハはまた、同社は米GEに並ぶコングロマリットになる可能性がある、と言っていることも、同社の株式購入を検討している投資家にとって極めて重要な情報だ。
・ファーリハは言う、「GEのような会社は、航空宇宙(Aerospace)から健康産業(healthcare)照明(lighting)、石油ガスなどすべてのことをやっているが、我々サウジアラムコも、その気になればGEの何倍もの会社になれる」
・再生可能エネルギーや特殊機能化学品に事業を拡大する一方、「世界LNG産業の次のビッグプレーヤー」になる可能性もある、とも語っている。
・また次のようにも言っている。
・上場することにより、ロボット産業、”IOT”あるいはデジタル事業などさまざな分野への展開も可能になるだろう。
・これまでガスと石油に依存していたが、2023年までには太陽光や風力、あるいは他のクリーンエネルギーで、ピーク需要の約10%程度となる10ギガワット発電することを目指している。
・将来的には、再生可能エネルギーと原子力で需要の30%を賄うことを目指したい、もっとも今すぐに原子力発電所を建設するわけではないが。
このインタビューはPhilita Clarkという記者が行ったもののようだ。COP22の取材に出向いていたのだから、おそらく環境問題担当の記者なのだろう。エネルギー担当のAnjli Ravalがロンドンで加筆しているようだが、もうひとつ突っ込みが足りない気がする。
世界の約15%の埋蔵量を持つサウジは毎日約1,000万B/Dの生産を続けている。つまり毎年36.5億バレルの原油を生産(消費)しているのだ。毎年36.5億バレルを生産して、毎年同量の埋蔵量を追加する、その結果2,600億バレルが維持される、ということは、極めて不自然だ。何がしかの凹凸があって然るべきなので、何かのトリックがあるはずだ。
ファーリハがいうように、「独立した第三者による検証」を経たデータが公表されれば、この「トリック」の中身も明らかになるだろう。
どんな風になっているのか、今から興味津々だなぁ。
編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2016年11月16日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。