11月27日にフランスの次期大統領が決まる(追記あり)

八幡 和郎

来年5月に行われるフランス大統領選挙へ向けての動きが本格化している。中道右派の共和党で予備選挙が11月20日と27日に行われるが(過半数を取る候補がいなければ決選投票)、ここで選ばれた候補者がほぼ確実に次期大統領になると言われている。

現在のオランド大統領(1954年生まれ)を含めて左派の候補者は人気が低迷しており、第一回の上位二位で争われる決選投票は、極右のFNマリーヌ・ル・ペン党首(1968年生まれ)と共和党の候補で争われ、よほどのことがない限り、共和党候補が勝つとみられている。

共和党の予備選は7人の候補で争われているが、最有力はジュペ元首相(1945年生まれ)。

ジュベ

共和党最有力候補のジュベ氏(Wikipedia)

私の留学先であるENA出身でジスカールデスタン大統領などと同じ財政監察官となり、シラク大統領の後継者とみられていたが与党の資金疑惑にみまわれサルコジに譲った。ボルドー市長を長く務め姉妹都市の福岡市との交流があった。穏健な中道派で、左翼にとっても忌避感は少ない。ただ、高齢でいかにも古いタイプのエリートだ。

それに対抗するのはサルコジ前大統領(1955年生まれ)で、元弁護士、いわばフランスの橋下徹的な政治家だ。劇場型の行動様式で知られ、極右的な支持者への受けも狙う。

サルコジ

サルコジ氏(Wikipedia)

しかし、最終盤になってサルコジ大統領のもとで首相をつとめたフィヨン氏(1954年生まれ)が急上昇し、もし、決選投票になったら前両者に勝つかもしれないといわれるようになった。迫力はないが、ネガティブ・イメージはいちばん少ない。

左派はオランド大統領の支持率が20%以下という現状で、もともとカリスマ性に乏しく浮上のチャンスもだんだん考えられなくなっている。もし出馬しなければ、左派のモントブール元経済相は左派過ぎる上に野心家的すぎ、スペインから帰化したヴァルス首相は厳しい不法移民対策などで人気が出たがスペインからの帰化人であることの限界あり。

そこで、注目されているのがエマニュエル・マクロン前経済相(1977年生まれ)だ。ENAからシラク大統領と同じ会計検査官となり、ロスチャイルド銀行の副社長もつとめたあとオランド大統領のもとで経済相をつとめた。夫人は高校時代の先生で20歳年上。

ブレア元英国首相に近い自由社会主義者であるヴァルス首相(1962年生まれ)よりさらに右で、左派・右派の対立を超越した新しい発想でフランス経済の再建を訴える。たとえば、労働時間、定年などは個人で選べる範囲を拡大しようと主張するなど、安定を望むかチャレンジを望むかを個人の選択にまかせることが新発想だとしている。標語は希望・楽観・解放emancipationだ。

見通しとしては、もっとも可能性が高い、ジュペ、ルペン、オランドなら前二者が決選投票に残りジュペの圧勝だ。ジュペのかわりにフィヨンでも同様かもしれない。左派でかすかに勝機があるとすればマクロンの人気が爆発して、サルコジ、ルペン、マクロンといったパターンになったときか。この組み合わせだと、三者それぞれに勝機があるかもしれない。

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5年後よもやの躍進?ルペン氏(Wikipedia)

トランプの勝利や英国のEU離脱がルペンに追い風になっていることはいうまでもない。まあ、来年はないだろうが、5年後にはもしかしてルペン大統領もありえないわけでないという人もいる。

そして、予備選挙の結果を無視して、候補者が乱立すると、それこそ何が起きるか分からないと云ったところか。

※追記・21日12:00

フランスの次期大統領にフィヨン元首相が断然有力に

最大野党の共和党の予備選で終盤になって伸びていた第三の候補フィヨン首相が地滑り的大勝か。27日の第二回投票はフィヨンとジュペの両元首相で争われるが、敗北したサルコジ元大統領もフィヨンに投票することを声明したので断然有利か。(以下は日本時間600の情勢)