自分の都合の悪い方にマーケットは動いていく

投資をしたことのある人なら、自分が購入したら株価が下がったという経験をしたことがあると思います。株を買うと下がる、外貨投資すると円高になる・・・自分にとって都合の悪い方向に進むのがマーケットというものの奥深さであり恐ろしさです。

日本人が将来の資産を守っていく上で、都合が悪いのは「円安」と「インフレ」です。

円安とは円の通貨価値が下がっていくこと。今週進んだ円安は日本人の富を減少させています。さらに115円、120円と円安ドル高が進めば、保有している円資産の実質的な価値は失われていくことになります。インフレも同じです。もし日銀が目指しているように物価が2%を超えて上昇していくことになれば、同じ資産で購入できる購買力は低下します。

問題は、円安やインフレがいつ、どの程度の大きさでやってくるかがわからないことです。例えば、現時点の物価水準を前提に、老後の生活資金として1億円保有していたとしても、もし物価が2倍になれば、その実質的価値は5000万円になってしまいます。それは、来年早々に起こるかもしれませんし、オリンピックまでは何も起こらないかもしれません。

とは言え、そんな都合の悪いことが起こった時のためにどんな準備をしたら良いのでしょうか。円安には外貨資産の保有、インフレには株式や実物資産の保有、そして借入を行うことが対策になります。

インフレに関して言えば、もし物価が2倍になっても、株価が2倍になれば実質的な資産価値は目減りしません。また、投資している不動産の家賃が2倍になれば不動産価格も2倍になるでしょうから、インフレに対抗できるのです。

さらにもし借入をして不動産投資をしていれば、物件価格が2倍になっても借入残高はそのままですから、むしろ資産が増えていくことにさえなるのです。インフレと資産価格が完全に連動するとは限りませんが、預金を比較した場合の優位性が理解できると思います。

しかし、株式で資産を保有する場合、価格の変動が大きいという問題があります。リーマンショックの時はインデックスであっても4割以上下落しました。円高になれば外国株式は2重のマイナスになります。長期的には報われる投資ですが、短期の大きな変動に耐えられる投資家だけに限定される投資対象なのです。

トランプ大統領の誕生が決まって、円安株高で盛り上がっているマーケットですが、そんな目先の動きではなく5年後、10年後の資産形成を考えてポートフォリオ戦略を立てることが益々重要になってくると思います。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また投資の最終判断はご自身でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2016年11月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。