フィンテックで日本の金融市場は変わるのか?

尾藤 克之

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FinTech(フィンテック)による、ITを駆使した金融サービスの動きに注目が集まっています。これまで、米国で発達し日本に波及してきました。その契機になったのは、2008年のリーマンショックだといわれています。世界的な金融危機によって日本も大きな影響を受けることになります。

リーマンショック以降は、欧米の多くの金融機関が経営困難に陥りました。銀行による貸し渋りが発生し、併せて口座手数料や融資利息の引き上げがおこなわれたため、さらなる混乱を招きます。これらの事態に呼応するように、中小企業や低所得者層を中心に銀行に対する不信感が高まり、新たなサービスを求める動きが加速してきます。

フィンテックによる潮流とトレンドを整理した『まるわかりFinTechの教科書(プレジデント社)』は、日刊工業新聞で第一線の経済記者として活躍した丸山隆平氏が、アメリカ発祥のフィンテックが成立した背景、日本の金融市場への影響度を分析しています。フィンテックによって、金融市場のビジネスのあり方がどのように変化していくのか、具体的な道筋を知りたい方には有益といえます。

丸山氏は、リーマンショック以降の流れを次のように分析しています。まず、多くのリストラによって金融を中心とする優良企業から人材が流出したことです。それらの人材がITに流れた結果、新たなベンチャーを形成します。ベンチャーを支えるのは、ミレニアル世代(20代~30代)です。この点は、日本と米国では大きく異なります。日本では少子化が進み人口が減少していますが、米国では37歳以下の世代が全体の50.4%を占めています。

「The Millennial Disruption Index」によれば、米国のミレニアル世代には、3つの特徴があることが明らかになっています。
1)85%がスマートフォンを所有している
2)78%がモノよりも経験にお金を使いたいと感じている
3)40%が将来的に都会に住みたいと考えている

注目されるのは、銀行にまったく行かない人が38%にも達し、1ヵ月に1回も訪れない人が26%を占めていること。銀行よりも、Google、Amazon、Apple、Paypal、Squareから提供されるサービスに期待するという回答が多数を占めていることも興味深い結果です。

アクセンチュアによれば、フィンテックヘの投資は大幅に増加していることがわかります。米国を中心にその額は伸びており、2015年には2010年に対して12倍の220億ドルまで伸長しています。

また、丸山氏は金融とITの相乗はユーザーの利便性向上と、産業構造の進化の可能性を大いに秘めているとしています。果たしてフィンテック経済の仕組みを変える立役者となるのでしょうか。その動向に注目が集まっています。

尾藤克之
コラムニスト

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