IR法案成立が依存症対策の充実につながるというのは筋が悪い

Resorts_World_Sentosa

シンガポールのIR施設リゾート・ワールド・セントーサ(Wikipediaより:編集部)

依存症対策に真剣に取り組んでおられる方々がどうやら依存症対策の充実のためにIR法案の成立を望んでおられるようだ、ということを知って少し驚いている。

ご主人がパチンコ依存症になってしまい、結婚して間もない女性やそのご家族の方々がこれでは生活が破綻することは必至だと思って泣く泣く離婚を決意されたなどという事例を身近に知っていたから、依存症がしばしば生活破綻や人格破壊に結び付くことがある、ということは分かっていた。

競馬や競艇に嵌ってしまい、自分の預金はもとより家族の預金にも手を出し、あちこちの消費者金融に手を出して二進も三進も行かなくなった人も見てきた。

依存症になってしまうと自分の意志の力で生活を立て直すことは殆ど不可能で、一族郎党が路頭に迷うようなこともしばしばある、ということも知っている。

不幸のどん底に陥った人をどうやって救うか、ということを真剣に考えている人たちは、パチンコ屋競輪、競馬が殆ど野放しの状態で、有効な依存症対策が取られていないことに強い怒りさえ覚えておられるようだ。

国会で審議されているIR法案には一つの重要な柱、ないし目玉として依存症対策が盛り込まれているから、この依存症対策をカジノ以外にも広げることが出来るかも知れないと思われてIR法案の成立に期待を寄せられているようである。

うーん、そうかな。

私などは、世界の富裕層の懐からお金を掠め取ろうとしていること自体に違和感が拭えないのだが、依存症対策の充実のためにはこういうことでもしないとなかなか道が開けない、と言われると、それもそうかしら、などとつい妥協的になってしまうが、やはりどう見ても筋が悪い。

気持ちは分からないでもないが、やっぱり賛成派出来ないな、というところである。

しかし、IR法案をこの国会でどうしても通したい方は、どうやらこういうことに無頓着なようである。

衆議院では5時間余りの審議で終了して、昨日の本会議で可決して参議院に送ってしまった。
12月9日には参議院でも可決したいというのいだから、途轍もない急ぎようである。

何だか皆さん、バタバタしている。
そんなに前のめりになって大丈夫なの、と聞きたくなる。

腰高になった人は、相撲が弱い。
そのうちがっぷりよつの大相撲になるのだと思うが、腰が浮いているとなかなか力が入らないものだ。
甘く考えていると、いつかは足元を掬われる。

ご用心、ご用心。

とりあえず、そう申し上げておく。


編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2016年12月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。