ネコブームが到来している。平成27年の「犬猫飼育実態調査」によれば、猫が987万4000匹、犬が991万7000匹と差は僅かだ。しかも、ドラマ『オトナ女子』(フジテレビ)に出演していた“ちくわ”をはじめとする、スター猫などの写真集も売れているという。
和歌山県のエヌ・ケイ・ステーション(以下、同社)は、広告、パンフなどを製作するデザイン会社である。同社は地域ネコ(地域住民の理解の上で管理されている猫)を会社で飼い始めたのがきっかけだった。同社はある取組みによって目覚しい効果をあげている。今回は、社長の中本活美(以下、中本)氏にネコ効果について聞いた。
■にゃんと、ネコが営業と販促をおこなう
同社にはワイルドという名前のネコがいる。別名は「社内の営業部長」。お客様が来社すると、まず、お客様に挨拶に行く。大人数での来訪なら、いち早くキーパーソンを見つけて重点的にもてなす行動をとる。かなりマメで人見知りはしないそうだ。
「ネコはいうまでもなく動物です。本能的に、人の気持ちや立場を読み取って、それに沿った対応をするのです。気難しいタイプのお客様でも、何回でも、迷惑にならない程度に擦り寄り、そしてアプローチ。ネコを飼ってから、会社に来られるお客さまが増えたように思います。」(中本)
「しかも、当社に来るお客さまはいつもリラックスしています。商談も緊張することなく、リラックスした雰囲気のなかで進みます。これは明らかにネコ効果です。」(同)
また、社内のミーティングなども、ネコが視界に入るだけで難しい雰囲気になったりせず、話が円滑に進むそうだ。ネコはすでに経営のイニシアティブを握っている。ネコ諸氏の意見を反映せずに物事は進まないらしい。
「最近は、来られるお客さまが長居するようになったと感じています。居心地が良いので、長居するのでしょうか。長く会社にいることで雑談も増えます。なかには、有益な情報を提供いただく場合もあります。仕事に必要とされる情報が、ネコによってもたらされるのです。」(中本)
どうやら、同社のネコはビジネスを円滑に進めるテクニックを持ち合わせているようだ。例えば、営業マンは「お客さまに寄り添うように」と指導される。ところが、同社のネコはいつでもお客さまに寄り添っている。これは立派な営業スキルともいえる。
「お客さまのリピート率アップしました。以前は一人で来ていたお客さまが、ネコ好きの人を連れて来社するようになりました。中途採用を募集すれば、例年の数倍の応募が殺到。まさに“招きネコ”です。営業の役割、広報の役割をしっかり果たしてくれています。それに応じて売上も右肩上がりで増えています。」(中本)
■ネコによるストレスチェック対策
また、WEBで人を吸引するのはネコのお陰だと中本は目を細める。FBやホームページでネコを見て、会社のことを覚えてくれたり、問い合わせをくれる人も多いからだ。また宣伝の際にネコの写真などを入れることで、宣伝色を薄める副次的効果がある。
社内のデザイナーも、ネコたちに助けられることが多い。デザイナーは職人気質の人が多く生活も不規則になりがちだ。しかし不規則により蓄積した疲れをネコが癒してくれる。同社の社員やスタッフは、ネコたちによってメンタルが良い状態に保たれているといっても過言ではない。ネコセラピーの効果といえよう。
ブラック企業がバッシングされる昨今の風潮だが、職場の雰囲気を刷新したい会社にとってはヒントになるかも知れない。なかにはネコアレルギーの人も居るので万能というわけではないが、参考になるヒントが見つかるかもしれない。
尾藤克之
コラムニスト
アゴラ出版道場、第1期の講座が11月12日(土)に修了しました。12月6日に「第3回アゴラ著者入門セミナー」を開催しました。「第4回アゴラ著者入門セミナー」は、来年、1月31日の開催予定です。
なお、第2期出版道場は、来春予定しています。