有識者に期待されるのは、皇室典範に付則を付けて現行法制の不足を補うこと

現行皇室典範に付則を付けるのも皇室典範の改正だと認めておられる方の法律上の見解は正しい。

まあ、皇室典範の本体(根幹)部分はそのままにして天皇の譲位(生前退位)を限定的に認めようとされている方々からすれば、本体をいじらないのにこの程度のことで皇室典範を改正するとまで言っていいのだろうか、という思いから、皇室典範の特例法を制定して天皇の譲位(生前退位)制度を導入する、という物言いになってしまうのだが、現行憲法の条文を字義通りに厳格に解釈すべし、と主張される方々のご意見を尊重すると、現行皇室典範に付則を設けるだけで皇室典範を改正することになるのだから憲法違反問題はこれで解消だ、ということになるのだろう。

憲法の条文に拘る方への説明はこれでいいと思うが、憲法の趣旨を深く考えられる方々にとってはまだ納得は行かないかも知れない。

特例法など制定しないで、特例法に書き込むべき内容を皇室典範そのものに書き込むべきだ、とか、皇室典範は憲法と同格に扱うべきものだから憲法を改正しないと皇室典範も改正してはならないものだ、などという議論が相変わらず起きてくるのだと思う。

私は、皇室典範は国会で決めることが出来る法律の一つだから、法律の制定手続きを踏んでいる限り特に問題はない、という立場に立っているが、法律的にはそうであっても天皇の譲位(生前退位)制度の導入に当たっては、明文の規定がなくとも皇室会議の議を経て行うこととするのがいいだろうと思っている。

まあ、今月中に有識者会議の結論が出されることになっているから、天皇の譲位(生前退位)問題についての議論は当面、この程度に止めて有識者会議の報告を待つのがいいだろうと思っている。

大事なことは、議論を先鋭化しないこと、国民の世論の分裂や対立を招くような愚かなことをしないことである。

有識者会議の皆さんが叡智を発揮してくださることを、心から期待している。


編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2016年12月12日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は首相官邸サイトより)。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。