【映画評】ぼくは明日、昨日のきみとデートする

渡 まち子
「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」オリジナル・サウンドトラック

京都の美大に通う20歳の大学生・南山高寿は、ある日、電車の中で福寿愛美と出会い、ひとめぼれする。高寿は勇気を出して愛美に声をかけ、また会えるかと約束を交わそうとするが、愛美はその言葉を聞いた途端に涙を流す。彼女のこの時の涙の理由を知る由もない高寿だったが、意気投合した二人はその後、交際を始め、周囲がうらやむほどの関係に。すべてが順調に思えたある日、愛美は高寿に、彼が想像もできないほど大きな秘密を打ち明ける…。

愛し合う20歳の男女が遭遇する不思議な運命をファンタジックな仕掛けで描く純愛ラブ・ストーリー「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」。原作は七月隆文の小説で、風光明媚な京都を舞台にした、不思議な恋愛物語だ。これはもはやSFではなかろうか?!と思うほど、ありえない設定なのだが、「時をかける少女」や「ベンジャミン・バトン」を連想させる、その大きな秘密を除けば、すべてがリアルな恋愛模様。それを恋愛映画の名手の三木孝浩監督が、繊細に描いていくのだから、胸キュン度は極めて高い。

もちろん京都の素晴らしい風情が大きな魅力のひとつだ。京都はすべての風景が絵になる場所だが、ことさらご当地映画のようにはせず、あくまでも背景として控えめに描写し、その代わりに愛美が抱えるその切ない不思議と呼応するかのように、淡い光を駆使する映像が美しい。美大という設定も効いていて、高寿の親友を演じる東出昌大の個性的かつ愛嬌があるキャラクターも、好感度が高い。本作は、恋人たちの秘密と運命を素直に受け入れられるかどうかで、評価が大きく変わる映画だろう。だが、過去と未来はいつも天秤のようにつながっていて、それを現在が支柱となって、かけがのない“この瞬間”を支えてくれている。そんなことに気付かせてくれる物語だった。
【55点】
(原題「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」)
(日本/三木孝浩監督/福士蒼汰、小松菜奈、東出昌大、他)
(スーパーナチュラル度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年12月21日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は東宝作品公式Twitterより引用)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。