ある楽観論者の2017年展望

我らのニック・バトラーが新年最初のFTコラムを “An optimist’s view of 2017” (Jan 2, 2016 around 14:00 Tokyo time) と題して投稿している。Bloombergの「ブルムバーグの2017年悲観論者ガイド」(”The Pessimist’s guide to 2017” Dec 5, 2016)への対比で書いているようなのだが、筆者にはこれまた「悲観論」のように感じられる。読者の皆さんはどう受け止められるだろうか。

要点を次のとおり紹介しておこう。

・「ブルムバーグの2017年悲観論者ガイド」のいくつかは、2017年に世界中でとんでもないことが起こりそうだ、というものだ。昨年の同ガイドでは、英国のEU離脱(Brexit)もトランプ大統領の登場も予測していた。今年は、米国がNAFTA(北米自由貿易協定)から離脱し、メキシコ経済が崩壊する、ということから、マリーヌ・ル・ペンが次期仏大統領に選出されることなどを予測している(日本がサウジとともに核武装化へ動き出す、ということも記載されている)。カリフォルニアの米国離脱(Calexit)やサウジのムハンマド副皇太子が辞めさせられる(宮廷革命により、とある)など、歓迎する人もあるだろうが、矛盾した内容と思われるものも含まれている。然し、悲観論というものには限界があるので、ここではいくつか新年の希望を書いてみよう。いつものようにエネルギーの中核的問題を取り上げるが、政治的要素も無視することはできない。ここに上げるいくつかの可能性は、多かれ少なかれ起こりそうなことだが、1年前にドナルド・トランプが大統領に選ばれるとの予測が大博打であったように、いくつかのものは博打の類だろう。

・ベネズエラで平和革命が起こり、マドーロ政権は放り出されるだろう。新政権は、過去10年間に中国との間で合意された取引はすべて無効だと宣言し、新たな入札が行われるだろう。

・世界中で電気自動車の普及が目覚しく進むだろう。新規登録は2016年の60万台から2017年には100万台を超えるだろう。ロンドン、ベルリン、北京など世界6大都市で渋滞税と排出税が導入され、モータリストにとって電気自動車がもっとも合理的な選択肢となろう。内燃エンジン自動車への新しい駐車税は、都市および周辺地域での充電設備ネットワーク形成の基金となろう。

・2017年秋の党大会で指名される中国新政権は、2025年までのエネルギー自立を目標として掲げよう。電気自動車やシェールガスの開発、小規模原子力発電所建設および再生可能エネルギーの開発に注力するだろう。

・これまで長い時間をかけて検討されてきた北仏Flamanvilleにおける原子力発電所計画は、当局により更なる技術的失敗が発見され、放棄されることになろう。

・イラン・米国友好条約の締結と、NIOCとシェブロンの新投資契約調印に立ち会うため訪問するトランプ大統領は、テヘランで大歓迎を受けるだろう。さらにこの祝典の一環として新たに設立されたTrump Oil Service社が、石油ガス田の関連諸資機材の更新ならびにイラン国中のインフラ整備の契約を獲得するだろう。イラン政府は、OPECの生産枠に囚われず、2018年半ばには一方的に500万BDまで増産するだろう。

・イランの成功した一年は、永年のライバルであるサウジの政権交代で完了するだろう。ムハンマド副皇太子が国王に就任するだろう。国王として最初に行うのは、マッキンゼー社に、2026年冬期オリンピックをジェッダに誘致するプランを作らせることになろう。

・ロシアの国営石油Rosneftの第三次株式売却が行われるが、今回は海外に逃避した資金の一部をロシアに送金するよう圧力を受けるロシア人向けになろう。インターネット技術を完全にマスターしたプーチンは、どこに金が隠されているかを正確に把握していることを彼らに思い出させることができるだろう。

・石油需要の増加は80万BD以下に落ち込み、需要ピークが近づいていることを示すだろう。イラン、ベネズエラ、ロシアおよび米国が増産し、2016年11月のOPEC減産合意は崩壊するだろう。石油価格は50ドル以下に落ちこむだろう。

・読者の皆さんの、いかなる予測も歓迎する。今後の投稿の中で、私のコメントを伝えたいと思う。

・皆さん、新年明けましておめでとう。

ふむふむ。
筆者が特に興味深いのは、石油需要増が80万BD以下に落ちるだろうということの背景にある電気自動車の普及度合いと、ムハンマド副皇太子の去就だ。
じっくり事態の進展を注視してみたい。
はてさて1年後にはどのような世界となっているのだろうか。


編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2017年1月2日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。