朝日新聞の新年ダメダメ記事

新年早々、ひどい記事を読んだ。朝日新聞の「ライドシェア、需要に疑問符も 米ウーバーが狙うものは」である。京都府京丹後市で高齢者向けのライドシェアに米ウーバー・テクノロジーズがシステムを提供した、というところから記事は始まる。タクシーの料金が明確でサービスの質も高いとされる日本では、ライドシェアへの需要が海外ほど高まるかは疑問である、と記事は続く。そのうえで、それでもウーバーが参入したのは、様々な交通情報が集め完全自動運転時代に備えるためだ、というのが結論である。

そもそも京都府京丹後市がライドシェアを実施しているのは、記事にもあるように「タクシー会社は撤退し、マイカー以外の移動手段は限られて」高齢者が困っていたからだ。京丹後市の市報にも、高齢者は利便性の高い地域交通を求めていたと書いてある。どうして、それを紹介した後で、日本はタクシーの料金が明確でサービスの質も高いと書けるのだろうか。

問題は記事後半にもある。ウーバーの日本市場参入の理由である。最近は他社と協力してビジネスするのが当たり前、ということを記者は知らないらしい。以前の記事「グーグルが自動運転車で欲しいのは膨大な情報」でも説明したが、たとえば、移動通信事業者は携帯端末の移動状況をすべて把握しているので、道路の開通といった情報もあっという間に取得できる。移動通信事業者と協業できれば、ウーバーは交通情報を自前で集める必要はないのだ。

ウーバーの役員が「自動運転に関心がある日本だからこそ、ライドシェアが解禁されることを期待している」と都内で講演したと、記事は説明している。日経BPに講演の模様が掲載されている。それによると、利用効率の悪い自動車のために都市の貴重なスペースが駐車場に費やされているなどの問題点を指摘し、「自動車から発生する排気ガスによる環境負荷の抑制につながる。公共交通機関が通っていない地域に住み、車を保有しない人が、安価で柔軟な移動手段を得られる」とライドシェアの意義を語ったことになっている。

ライドシェアやカーシェアなどのシェアリングと自動運転は、ウーバー役員が説明するように都市問題の解決につながる。自動運転の研究開発に力を入れる日本がライドシェアに消極的なのはおかしい、と指摘したとは聞けなかったのだろうか。

この記事は新年特集「シェアの時代」の一環だが、妄想記事は評価できない。記事公開前に取材チームはちゃんと議論したのだろうか。朝日新聞を信じる人はもはや少数派かもしれないが、どこかの地方議員がこの記事を根拠にライドシェアに反対したら、その地域の高齢者は移動手段を失い困るのだ。