あなたの周りに、次のような人はいないか。「なぜか上司や取引先にいつも好かれる」「能力が特別高いわけでもないのに、周りに信頼されている」「本人の実力以上に評価されている」。いわゆる「憎めない人」である。一方、その逆の人もいる。
両者の能力や性格が同じだとしたら、評価を決定づける要因とはなんだろう。好かれる人、嫌われる人を分ける分岐点が存在するのだろうか。多くの解釈があると思うが、マナーが与える影響について考えてみたい。
西出ひろ子(以下、西出氏)は、マナー講師である。主な著書としては、27万部のベストセラーを記録した『お仕事のマナーとコツ』(学研) があり、2010年「NHK大河ドラマ・龍馬伝」にてマナー指導を担当するなど活動は幅広い。日本でもトップクラスのマナー講師として知られている。
■意外に知られていないお酒の正しい注ぎ方
――最初の乾杯は「とりあえずビール」が多いのではないだろうか。ビールを注いでもらうとき、泡の立ち方を調節するために、はじめは傾けてお酒を注いでもらい、途中からまっすぐ立てるという人も多いことだろう。これは、マナーとして正しいのだろうか。
「お酒はビール以外にもたくさんあります。では、ビール以外のお酒を注いでもらうときにも、グラスは傾けておけばいいのでしょうか?それともまっすぐ立てたほうがいいのでしょうか?本来ビールを含めたお酒は、基本的にはグラスをまっすぐにして注いでもらうのがマナーとされています。」(西出氏)
「日本では相手に対する配慮を深く追求し、よりよい型をあらたにつくり、マナーの型を進化させる傾向があります。なぜグラスを傾け、美しい泡をつくるようにするのか。その一番の理由は、注いでくださる方に恥をかかせない思いやりの気持ちからなのです。」(同)
――相手を思う気持ちから、ビールを注いでもらうときにはグラスを傾けるようになったそうだ。気遣いをしているようにも見えて、泡の立ち方も調整できるという、プラス効果があったのである。しかし、これは海外では見かけない光景である。事実、私もグラスを傾ける外国人に会ったことはない。
「場所や相手に応じた使い分けが必要となってきます。場面に応じて、最適な注ぎ方、注がれ方、飲み方を身につけて、スマートでかっこいいと評価されるマナーのできる人になりましょう。また、グラスを持つ手は、上げすぎず胸のあたりに位置するのが理想的です。乾杯をするときは目の高さまで掲げます。」(西出氏)
「ここでワイングラスの持ち方をご紹介します。ワイングラスは、ワインが溜まるボディとステムと呼ばれる脚の部分とペースで構成されています。ワイングラスの持ち方として考えられるのは、大きく3通りに分かれます。中指と薬指でボディとステムの付け根を挟み、ボディ部分を持つ人と、親指と人差し指、中指でステムの部分を持つ人、また、ボディの部分を持つ人です。」(同)
――では、どの持ち方がマナーとして好ましいのだろうか。
「ワイングラスの持ち方としては、親指と人差し指、中指でステムの部分を持つことがもっとも正しいとされています。理由は、ワイングラスは高級品になればなるほど、とてもうすく繊細なつくりとなっています。その中でも、ステムの部分はボディよりもしっかりしているため、手の圧力で割れる心配がなく持っていて安心だからです。」(西出氏)
■マナーとは相手の立場に立ち配慮をすること
――ボディ部分を持つと、指輪などでグラスの表面に傷をつける可能性がある。また、手のぬくもりからワイン自体の温度が上がるため、最適な温度で飲めないなどの理由から、控えたほうがよいとされている。他にも間違った持ち方があるので留意いただきたい。
「中指と薬指でボディとステムの付け根を挟み、ボディ部分を持つのは、やめましょう。これは、ブランデーグラスの持ち方となります。繰り返しになりますが、マナーというのは相手の立場に立つことです。相手を考えれば、ワイングラスを割らないように、ステムの部分を持つというのがもっとも正しいのは当然のことでしょう。」(西出氏)
――評価が高い人は、注がれるときにも相手に配慮する。残念な人は、注がれるときに相手に恥をかかせる。あなたのスタイルはどちらだろうか。
参考書籍
『頭がいい人のマナー 残念な人のマナー』(すばる舎)
尾藤克之
コラムニスト
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