夫婦の家事分担と結婚相手の職業

夫婦 家事 写真AC

夫婦の家事分担について、経済学の「比較優位の原則」を用いると双方の余暇時間が増やすことができます。

例えば、「皿洗い」という作業と「片付け」という2つの作業について考えてみましょう。

1日の「皿洗い」に妻が要する時間が20分で夫が30分、同じく1日の「片付け」に妻が要する時間が10分で夫が60分だとしましょう。

いずれの作業でも妻の方が要領がいいので妻一人が2つの作業をこなせば30分で済みます。

しかし、これでは家事分担をしているとは言えません。そこで、多くの夫婦がやっているように1日おきに妻と夫が分担するとすると、6日間で妻は90分、夫は270分の時間を要してしまいます(それぞれが3日担当しますから)。
合計時間は360分です。

ちなみに、妻の作業効率を検証すると「片付け」の方が「皿洗い」よりも半分の時間でこなせるので、「片付け」に優位性があります。逆に夫の作業効率を見てみると「皿洗い」に優位性があります。

そこで、妻は「片付け」に専念し、夫は「皿洗い」に専念することにしましょう。
6日間で妻は60分を要し夫は180分を要しますので、合計時間は240分で済みます。
1日交代よりも6日間で120分も余裕時間が生まれますので、それを夫婦円満の時間に充てれば双方の満足度が高まります。

「片付け」と「皿洗い」というのはあくまで説明のための例であって、どちらかに100%専念するというのも机上の理論に過ぎません。実際上は、それぞれが優位性を持っている作業に重点的に従事すればいいのです。

ところが、100年人生について予測した「ライフシフト」によると、家事分担の比較優位は過去のものになり、結婚は「リスク分散型」(用語の記憶は不確かです…)になると書かれています。

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)
リンダ グラットン
東洋経済新報社
2016-10-21

「セックスと恋愛の経済学」でも、アメリカ人の結婚は(片方が失業しても生活していけるように)相互に保険をかけているようなものだという趣旨の記載がありました。

セックスと恋愛の経済学: 超名門ブリティッシュ・コロンビア大学講師の人気授業
マリナ アドシェイド
東洋経済新報社
2014-12-19

 

究極の「比較優位」は、夫が外に働きに出て稼ぎ、妻は家事育児を担当すると想定されているようです(得意分野に特化するということで)。

しかし、人生が100年になると、昔の結婚形態(夫が働きに出て妻は専業主婦をする)は様々な要因で不可能になります。
離婚もあれば死別もあるでしょうし、定年で仕事生活を終えることができない等の理由です(詳しくは「ライフシフト」を御覧ください)。

そこで、夫婦双方がそれぞれの収入源を持つことによって「リスク分散」を図らなければならないというのが著者の主張です。収入源を持つことは離婚や死別の場合のリスクヘッジにもなります。「相互に保険をかける」というのも同じような発想でしょう。

では、具体的にどのような結婚相手を選べばいいのでしょうか?

ファイナンス理論によると、最も効率的な資産運用は、持っている資産を「安全資産」と「リスク資産」に分け、うち「リスク資産」はインデックス連動のように分散投資をするというものです。

資産運用理論をそのまま結婚に当てはめるのは乱暴だと感じるかもしれません。
しかし、「リスク分散型」や「相互保険型」という結婚形態がそもそもお金に困らないようにするという意図なので、資産運用理論を結婚に当てはめるのは、あながち的外れとは言えないでしょう。

ということで、資産運用理論を大まかに当てはめると、夫婦も「安全資産」と「リスク資産」の組み合わせが(少なくとも将来の資金面では)最適となります。

例えば、あなたが小説家やイラストレーターといった「リスク資産」的職業だとすれば、結婚相手には公務員のような「安全資産」的職業が最適でしょう(転勤や通勤等を考えれば市区町村役場の職員が最も低リスクです)。

ベンチャー企業の経営者と安定企業(例えば…東京ガスや三菱地所なんでしょうかねえ?)の従業員、弁護士と国立大学法人の職員、ラーメン店経営者と病院の医療従事者…等々、不安定ながら当たればデカイという職業と安定しているものの大爆発は期待できないという組み合わせも同様です。

ということで、もしあなたが安定的な職に就いているのであれば、思い切ってリスクの高い仕事に就いている結婚相手を選ぶのは悪くない選択肢です。(もちろん、リスク許容度の範囲内で)
もしあなたが小説家やイラストレーターといったリスクの高い仕事をしているのであれば、結婚相手は公務員や大企業の従業員を選ぶのが「投資理論」上は正しい選択となるでしょう。

もちろん、双方安定でも(爆発を期待しないのであれば)何ら問題はありません。ただし、同じ会社は避けた方がいいでしょう。会社が破綻したら夫婦共に失業してしまいますから。

そういえば、昔の司法試験受験生で長期間勉強している男性の妻が公務員というパターンをよく見かけた憶えがあります。昔は、司法試験に合格すれば大きく爆発できるという期待が大きかったのかもしれません…^_^;

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編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年1月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。