【自衛隊貧乏伝説】
何もかもが足らない! ボンビー自衛隊の実態! 05」
自衛隊貧乏伝説「自衛官はなぜ【トラック輸送】されるのか?」
https://nikkan-spa.jp/12693802016年4月14日、熊本地震のあと、東北に住む友人から、「自衛官はトラックの荷台に板を一枚しいて東北から熊本まで輸送されています。トラックの荷台は人を運ぶためのクッションは何もなく、その振動はそのまま自衛官の足や腰にダメージとして残ってしまうのに。なんでこんなひどいことを防衛省はするの? 人間なのにモノ扱いなの?」というメッセージをもらいました。
陸自の部隊移動は、普通科などは基本トラックですよ。普通科は、以前は自前のトラックすらなく、輸送部隊に移動を頼っていました自前の輸送部隊が整備され完全自動車化されたのも近年のことです。
別トラックといっても荷台にベンチ式の椅子も装備されています。この記事を読むとあたかも、家畜運搬車のような印象を受けますが、著者が無知なのか、知っていて敢えて読者を誘導しようとしている意図があるのかはぼくにはわかりませんが。
仮に座席を使わずに、床に座らせて一杯の人数を押し込んでいるならばトラックが足りなかったからでしょう。それは台数が足りないか、稼働率が低いかあるいはその両方ですが、台数が足りないとは考えられないし、必要とあれば自衛隊はバスも多数保有しているので、それを使えばいいだけの話です。
そのようなことがあったとすれば、それは陸自の担当部署の能力の問題でしかありません。
22万7339人(平成28年度防衛白書)と順調に数を減らしています。周辺諸国による軍事的脅威の増大や、テロ活動の凶悪化などで、非常事態がいつ起きてもおかしくないこの時期に、国の財政の黒字化のためなら、リスクマネージメントなんてどうでもよく、「国民の命」よりも「予算削減」という財務省の「潔い」方針に呆れ返ります。
順調に国の予算も人員も減らされているので、熊本の地震対応に九州などの近隣の公務員だけではまったく対応できない有様でした。だから、全国から自衛官を呼び集めることになったわけです。
事実を全く歪めています。減っているのは任期採用の「兵隊」、2士、1士であり定数の4割程度しかおらず、士長を含めても7割です。対して曹・幹部・将官は増えています。
これは財務省がHPで公開しております。
これまた著者がその事実を知らないのか、世論操作を目的にしているかは、ぼくは知りません
西側先進国は勿論、人民解放軍ですら、装備の近代化のためには、兵力、部隊数を削減して、その費用を捻出しています。
例えば20年前と同じ防衛予算で、同じ兵力では、無人機の導入やネットワーク化、高価になった装甲車両や戦闘機などの装備も調達できません。ですから頭数を減らしているわけです。
ところが自衛隊、特に陸自ですが一番減らしたのは一番人件費の安い「契約社員」、反面正社員は増やしています。これで人件費が削れるわけがなく、しかも現場の兵隊さんは不足します。
例えば将官を1名減らせば、兵隊が10名以上、恐らくは30名ぐらいは雇えます。給料の差こそ5倍程度ですが、将官であれば年金は5~7千万円、年金や各種手当、更には副官、秘書官、運転手などの人件費など含めればそのくらいにはなるでしょう。
本来一番減らすべき偉い人を増やして、兵隊を削減したので、人件費を削減するという目的が達せられなかったのは自衛隊の自己責任です。
何故そうなるかというと、部隊数=将官・将校のポスト数の維持のためです。部隊は頭でっかちで栄養失調で結果骨粗鬆症みたいになっているわけです。
毎年使い切り予算ではなく、非常時のために防災的観点でも、治安維持、侵略への対応などについても経年予算、積み残ししてプールできる予算形態を防衛省だけには認め、自衛隊員も人間として扱うために「旅費」の項目もつくってほしいと思います。
著者は補正予算というものをご存じないのでしょう。
言うまでもありませんが、防衛省だけに関わらず官庁では補正予算というものがあります。
その年度中に思わぬ支出が起きた場合に、これを賄うために追加される予算です。
防衛省の場合、大規模な災害派遣で必要になって隊員の手当や、消耗品などは勿論、燃料代などもでます。また為替レートが変わって燃料代が高騰したりした場合も補正予算で手当されます。
もっとも最近はその補正予算で、本来本予算で買う輸送機やら装甲車やらの「高いおもちゃ」を買っており、本来の補正予算以上の金額を使っておりますが。
更に申せば先の大震災では復興特別会計というものありましたが、防衛省はその予算で完成してもいない、本来は将来の本予算で買うべきC-2輸送機を2機調達しています。
つまり被災者に渡るべきカネを、被災者のポケットに手を突っ込んで強奪したようなものですが、よくもこんな人でなしな予算が要求できたものだと、ある意味空幕の倫理観には感嘆するものがあります。
さすが、救難ヘリでもLCCが半分で済みますといって、UH-60Jに決定するという官製談合を平気であやる組織です。まともな感情とか倫理観を持っていると空幕でのお仕事は大変精神的に厳しいかと思います。
防衛省にも「旅費」は存在しています。ですが、通常の出張と災害出動は異なります。
たとえば遠方の部隊の隊員を飛行機で輸送することはできますが、その後彼らは現場にどうやって入るのでしょうか。
自衛隊は大変だ、可哀想だ、防衛予算を増やせというのはリテラシーと教養の低い、自分が日本人であること以外を誇れない、レッドネックな層の劣情にも似た可哀想な人たちの愛国心を煽ることができてPVが稼げるのでしょう。ですが、この程度の無知あるいは意図的に事実を捻じ曲げた我田引水の原稿を商業媒体に掲載することは問題があると思います。
どうしても妄想や空想で飯を喰いたいのであればジャーナリストやルポライター、評論家などを目指さず、小説家を目指すべきかと思います。もっとも自衛隊に関する知識がトンデモな自衛隊ネタの小説を書いても売れるとは思いませんが。
個人的な見解を申せば、この手のアジテーションに乗せられやすい、頭の悪くて短絡的で「ウリナラマンセー的な愛国者こそ、国防の最大的である思います。日露戦争から先の戦争までの歴史がそれを如実に示していると思います。
朝日新聞のWEBRONZAに以下の記事を寄稿しました。
南スーダンで負傷した自衛隊員は救えるのか
戦死者、戦傷者を想定していない「軍隊」の危うさ
http://webronza.asahi.com/politics/articles/2017011700001.html
Japan In Depth に以下の記事を寄稿しました。
自衛隊、オスプレイの空中給油能力を活用? その1
http://japan-indepth.jp/?p=32558
自衛隊、オスプレイの空中給油能力を活用? その2
http://japan-indepth.jp/?p=32583
編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2017年1月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。