世界最大のキリスト教宗派、ローマ・カトリック教会にも過激な根本主義組織が存在する。「オプス・デイ」(Opus Dei)だ。ラテン語で「神の業」を意味する。その「オプス・デイ」の指導者人事が23日行われ、スペイン出身のフェルナンド・オカリス司教(Fernando Ocariz) (72)が代表(属人区長)に選出された。バチカン放送によると、ローマ法王フランシスコは既に同人事を公認したという。
フェルナンド・オカリス司教は前任者ハビエル・エチェバリーア・ロドリゲフ氏の死後、暫定的にその職務を代行してきたが、今回、正式に3代目の属人区長に選出されたわけだ。
新属人区長は1944年、パリ生まれ。スペインのマドリードで成長し、バルセロナで物理学を、ローマで神学を学んだ。新属人区長はバチカン教理省の神学アドバイザーであり、法王庁立聖十字架大学の共同創設者だ。
「イスラム根本主義」という表現はメディアで頻繁に登場するが、世界に12億人以上の信者を抱えるローマ・カトリック教会内にもイスラム根本主義勢力に負けない「カトリック根本主義グループ」が存在する。その代表的グループが「オプス・デイ」だ。米作家ダン・ブラウンのベストセラー小説「ダ・ヴィンチ・コード」の中で登場して以来、一般の人々にも「オプス・デイ」の名は知られるようになった。
「オプス・デイ」は1928年、スペイン人聖職者、ホセマリア・エスクリバー・デ・バラゲル(1902~1975年)によって創設された。ローマ法王、故ヨハネ・パウロ2世が「オプス・デイ」を教会法に基づいて固有の自立性と裁治権を有する「属人区」に指定している。
「オプス・デイ」の創設者は故ヨハネ・パウロ2世に列福されている。その教えは従属と忠誠を高い美徳とし、肉体や性に対しては過剰なまでに禁欲を重視する。同グループはエリート部隊とみなされ、世界のキリスト教化を最終目標としている。世界に約9万2600人の「兵士」(約1500人の聖職者を含む)がローマ法王のエリート部隊として活躍している。メンバーの98%は平信徒で、聖職者は2%に過ぎない。医者や弁護士など高等教育を受けたメンバーが多い。メンバーの57%は女性。約70%は既婚者で、30%が独身平信者だ。
ちなみに、カトリック根本主義グループとしては、「オプス・デイ」の他、ガブリエレ・ビターリッヒが創設した「ワーク・オブ・エンジェル」と呼ばれる「天使の業」、マドリードの画家フランチェスコ・アルグェロが神に出会って回心、ギターと聖書をもって宣教を開始した「求道への道」などが存在する。
個人的な霊体験に基づく教えに一様に警戒心が強いバチカン法王庁は「天使の業」や「求道への道」に対しては批判的だが、「オプス・デイ」に対しは、歴代のローマ法王が加護してきた。その結果、「オプス・デイ」は今日、バチカン内外で大きな影響力を行使してきている。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2017年1月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。