日銀による国債買入の調整が債券市場参加者を疑心暗鬼に

25日の日銀の国債買入での中期ゾーンのスキップが、債券市場参加者を疑心暗鬼にさせつつある。日銀が何故スキップをしたのか、その理由が明確に見えてこないためである。

25日夕方のロイターの記事によると、日銀幹部は同日のオペの内容について「最近のオペの結果や国債市場の需給環境を勘案して決めた」と語ったそうである。また、オペ運営に関して「国債買入オペの金額・タイミング・回数は、金融市場調節方針と整合的なイールドカーブの形成を促すために適切に対応する」と述べたとされる。

27日の10時10分に日銀は国債買入をオファーした。国庫短期証券、1年超3年以下、3年超5年以下、5年超10年以下。1年超3年以下、3年超5年以下は予想通りで、金額も前回と同じ4000億円、4200億円。これで中期ゾーンの買入は今月5回目となる。

スケジュール上、30日は2年国債入札があり、31日は日銀の金融政策決定会合の結果の出る日であり、両日に中期ゾーンの国債買入がオファーされる可能性は極めて薄い。これによって今月の中期ゾーンの買入は5回に止まり、12月までの6回から1回分スキップされる。

ところが27日の国債買入では「5年超10年以下」について金額を23日のオペで4100億円となっていたものを4500億円と400億円増額させた。これを市場は好感し、債券先物は149円90銭台から150円台に上昇し、ドル円も115円台に乗せてきた。

これは25日の国債買入での中期ゾーンスキップの代わりに、5年超10年以下を増額したとみえなくもない。これはこれでむしろ中期は1回スキップされるとの見方が強まることになる。参考までに月ベースに直すと中期ゾーン1回分のスキップは8200億円の削減、5年超10年以下は400億円6回で2400億円増とトータルでは減額となる。

参考:日銀サイトの「国債買入」

参考:日銀サイトのオペレーション(日次公表分)

25日の債券市場は日銀の中期ゾーンの買入スキップを受けて売られたが、押し目買いが入り少し戻していた。ところが25日の米国市場でダウ平均は壁となっていた2万ドルを突破し、米10年債利回りも2.5%台に上昇した。これを受けて26日の円債は下落し、10年債利回りも0.085%と25日つけた0.080%を上回った。20年債は0.660%、30年債は0.840%、そして40年債利回りは1%台に乗せていた。

このあたりも意識して27日に日銀は微調整というか金額としてスキップ分の多少の穴埋めと長期金利の0.1%も意識しての5年超10年以下での増額を行ったのであろうか。このゾーンは先物にも直結するので、先物の買い戻しを誘うことも意識したのかもしれない。

しかし、これでまた市場関係者は余計に混乱しつつあるのではなかろうか。いったい日銀は何をしたいのか、何を考えているのかと。

日銀が何をしたいのかは、昨年9月に長短金利操作付き量的・質的緩和の決定である程度、明らかになっている。量では物価が動かない、マイナス金利は副作用のほうが意識されている。そこで量から金利に操作対象を戻して、なおかつ長期金利を操作目標に加えた。

本来であればマネタリーベースとともに巨額の国債買入についても修正を加えるべきであった。米国の金利上昇やその背景にある物価の上昇等を考慮すれば、日銀のマイナス金利政策そのものが時代遅れのものとなる。来年度の国債発行額の減少や日本の国債の利回り回復傾向による国債への投資家ニーズの回復も予想され、巨額の国債買入継続が難しくなることが予想される。それらを考慮した結果が中期ゾーンのスキップの本心だとしても、日銀としては為替市場などへの影響も意識され、緩和に前向き姿勢も崩せない。できることならマイナス金利政策もやめて、保有残高の増加額年間約80兆円をめどとするとの文面も削除すべきであろうが、利上げやテーパリングとみられる可能性があり、それが為替市場にも影響が出ることを恐れて踏み込めない。

これが結果としての27日での5年超10年以下の400億円の増額の調整理由ではないかとも予想される。看板は下ろせないが先行きを考えると出来る範囲で調整を入れざるを得ない。しかし、それが市場参加者との意思疎通を余計に悪くさせる要因ともなっているのではなかろうか。

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編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2017年1月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。