絶対にやってはいけない自治体PR

井上 貴至

「温泉と食事の街」「緑あふれる町」・・・

どこかで聞いた言葉だが、どこの地域かは全く思い出せない。いろいろなことに配慮しすぎて、結局、当たり障りのない言葉を選んでしまう。自治体PRの陥りやすい罠だ。

初めての人間が覚えられるのは、基本的に一つだけだと思った方がいい。香川県のPR「うどん県」は、そのことを強く意識したからこそ大成功したのだろう。

今となっては笑い話だが、高校・大学など卒業後10年以内に地元に戻れば返済を全て補填する長島町の目玉政策「ぶり奨学金」も、最初は「ぶりジャガ奨学金」にしようという意見が一部にあった。

それについては、
●長島町が世界一の売上高を誇るブリを全面に出した方がいい。
●出世魚かつ回遊魚のブリにあやかって、成長して戻ってきてという願いを込めている。
●そして、あれもこれも伝えようとして、何も伝わらない。

というようなことを丁寧に説明して、最終的に「ぶり奨学金」と名付けた。その結果、NHKの全国放送で何度も取り上げられるなど大ヒットになった。もし、「ぶりジャガ奨学金」や「一次産業振興奨学金」ならばほとんど取り上げられず、おそらく寄附も集まらなかっただろうし、更なる展開も生まれなかっただろう。

もちろん、ジャガイモや他の産業をないがしろにしているわけではない。門戸は、常に開いている。高齢者が音楽に合わせながら、じゃが♪じゃが♪と体を動かすイメージを込めたじゃがじゃがジムなど別の機会で、しっかりPRすることにしている。

しかし、他人の頭に残すためには、「一度に、一つだけ」が原則だ。

何を選んでどう伝えるか、そこにセンスが問われている。安易に、①当たり触りのない言葉にする、②あれもこれも伝えようとするというのは、そろそろやめてほしい。

Zeebraジブラ)も絶賛 お金をかけない自治体PR
湯沢市 × 長島町 自治体RAPが白熱!

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<井上貴至(長島町副町長(地方創生担当)プロフィール>
http://blog.livedoor.jp/sekainotakachan/archives/68458684.html

<井上貴至の働き方・公私一致>
東京大学校友会ニュース「社会課題に挑戦する卒業生たち
学生・卒業生への熱いメッセージです!
http://blog.livedoor.jp/sekainotakachan/archives/68581524.html

<井上貴至の提言>
杯型社会に、求められること
http://blog.livedoor.jp/sekainotakachan/archives/68619160.html


編集部より:この記事は、鹿児島県長島町副町長、井上貴至氏のブログ 2017年1月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は井上氏のブログ『「長島大陸」地方創生物語~井上貴至の地域づくりは楽しい~』をご覧ください。