任期満了に伴う東京都千代田区長選が1月29日に告示された。都議選の前哨戦とも言われており、その帰趨が小池都政に影響を与えることは必至だろう。私自身も少々思うところがあるので、私見を述べることをお許しいただきたい。
一連の流れを整理する
まず、1月29日に、次のような出来事があった。若狭勝衆議院議員(以下、若狭氏)が千代田区長選が告示された当日に小池都知事が支援する候補の出陣式に駆けつけたことである。「産経新聞(1月30日)」によれば、自民党の二階幹事長は「造反」の若狭氏に不快感を示したとも書かれている。
41歳の与謝野氏を念頭に「『若さ』を売りにしているが、こっちは『若狭』。『若狭勝』が来れば勝つ」と敵対姿勢をあおり、小池都政についても、「流れを止めるわけにはいかない」と訴えた。出陣式後、都連方針に反し現職を応援することに「迷いはない。都民のために戦っている」(原文ママ)と記者団に語ったともされている。
若狭氏は昨年7月の都知事選でも党方針に反して小池氏を応援している。しかし、小池氏の議員辞職に伴う昨年の東京10区補欠選挙には自民党公認で立候補し当選している。
当初から、若狭氏(当時は候補)への支援体制は群を抜いていた。告示の日、選対本部長を務める小池都知事、二階自民党幹事長、下村都連会長が応援演説に駆けつけた。10月16日には安倍首相と山口公明党代表が応援演説に立った。応援が功を奏して、若狭氏は投票率(60.3%)という圧倒的な強さで勝利を手にすることになる。
しかし、若狭氏は当選直後から離党を示唆していた。さらに7人の侍を擁護する(7人の侍という表現にも違和感を感じた)。自民党公認で当選しておいて信義に反することはないのか。最初から無所属で臨めば良かったのではと個人的には感じていた。
「信なくば立たず」、これは小泉純一郎元首相が好んだ言葉だが、秘蔵っ子とも言われた、小池都知事はどのように感じただろうか。若狭氏の「信」は何だったのだろうか。
「信なくば立たず」とは
弟子が孔子に「政治において、食料・軍備・信義いずれが大事か」と問うた回答の結びが「信なくば立たず」と言われている。「政治においては、信義が最も重要であり、それは食料や軍備よりも何よりも大事である」という意味だ。
さらに、孔子は、「信」があることで人間たらしめているとも解いた。自分の言葉に責任を持たねばならない。もし無責任な言葉を発して、人を裏切れば、それはもはや「人」ではないという解釈にもつながる。
今回の若狭氏の行動は、応援してくれた方々にどのように映るだろうか。自民党、さらには公明党に対して、どのような説明をするだろうか。政治家は「信」が必要である。事前調査では、小池氏と若狭氏の応援する候補が有利との情報があるが推移を見守りたい。
また、若狭氏は都連方針に反し現職を応援することに「迷いはない。都民のために戦っている」と記者団に語ったとされている。僭越ながら、都民のためにと申されるのであれば、豊洲市場移転を速やかに終結させる。さらに、オリンピックに関わる諸問題の道筋をつけることに尽力されることのほうが先ではないだろうか。
尾藤克之
コラムニスト