市場はOPECとシェールの綱引きが終わるのを待っている

はてさて綱引きが終わると何が起こるのか?
見出しに興味を惹かれ、一気に読みきってしまった。

記事はCITIのアナリスト、エドワード・モースの「20~30ドル幅で変動がありうる」とのご宣託で終わっている。
さて読者の皆さんはどう受け止められるのであろうか。

なお原文はFT “Oil market waits for OPEC-shale tug of war to end” (aorund 3:00am on feb 2, 2017 Tokyo time)である。

・石油市場はバランスの良くとれた二つのチームの綱引きの様相を見せている。問題は、いつ、どちらがついに負けを認めるか、にある。

・片方にロシアらを巻き込んだOPECの協調減産が、そして一方に50ドル以上となったことにより目を覚ましたシェールの復興があり、市場は年明けからせいぜい5ドル幅での取引となっている。

・ヘッジファンドはOPEC側に立ち、2年半の価格下落の後に高価格に移行すると見て記録的な賭けを行っている。

・これまでのところ、輸出実態からOPECが75%以上という歴史的に高い遵守度をみせていると判断されており、投機筋の直感が正しいことを示している。

・トレーダーやアナリストたちは、強気派(bulls)にとって問題なのは、記録的な在庫と十分な供給があるため、依然として現物市場が沈滞していることだ、という。

・短期的需要は、いくつかの地域における製油所の(操業を止めての)メンテナンス作業により妨げられており、今年後半にはOPECの減産効果でタイトになるという期待も、シェール増産などの構造的変化のリスクが影を落としている。

・「OPECは市場をタイトにすることができるが、永久に市場バランスを動かすことができるのかどうかには疑問が残る。米シェールは、1年以内に価格シグナルに反応できるゲームチェンジャーだ」とウイーンのJBC Energyのデービッド・ウエチはいう。

・米シェール業界はコストを切り詰め、低油価でも操業できるようになっており、より効率的に、坑井1本あたりの生産性を高めている。

・OPECとシェールの緊張関係は、比較的平穏なスポット価格のみならず、トレーダーが将来の価格動向を読み取り、生産業者がヘッジする先物曲線にも現れている。

・先物曲線は、完全な指標とは言い難いが、現在トレーダーたちが目先(ブレント原油4月受渡しもの55.50ドル)より数ヶ月先(9月受渡しもの56.50ドル)のほうが高いと見ていることを示している。だが、それから先は、2021年までほぼ横ばいか少し下がっている。

・だが、石油価格が安定しているのは、そう長くはないだろうと予測されている。多くのアナリストが、現在のボラティリティが低い状態は正常ではないと見ている。ある時点で、綱引きをしている、どちらかが足元を固め、どちらかが音をあげるだろうと見ているのだ。

・CITIのアナリスト、エドワード・モースは今週、向こう5年間はシェールオイルが65ドルで価格の天井を形成する展開となろうが、その間「めちゃくちゃな変動(wild swing)」があるだろう、と語った。

・政治の影響、供給阻害への対応をシェールが経験していないこと、およびライバルを弱らせるためにもう一度OPECが増産する能力があることなどが、ボラタイルな取引に寄与するだろう。

・「強気派、弱気派、双方にとっての(これらの)不確定要因(wild card)は、石油価格を短期間の間に20~30ドルの幅で変動させるだろう」とモースはいう。

昨日、ブッシュ政権時代にエネルギー政策の要諦を担っていたロバート・マクナリーがFTに寄稿し(”Boom and bust returns as oil market lose its swing” around 17:30 on Feb 1, 2017 Tokyo time)、1859年の石油時代の開始以来の歴史を振り返り「スウィングプロデューサーを失ったので、暴騰と暴落の時代が戻ってきた」と書いていたが、それが石油というものの事業の性格なのだろうか。

悩ましいなあ。


編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2017年2月2日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。