人にコントロールされる仕事人生から抜け出すには?

尾藤 克之

写真は参考書籍書影

皆さまは、ブックライターという言葉をご存知だろうか。ゴーストライターと言ったほうがわかりやすいかもしれない。

ビジネス書のゴーストライター業が生業の、上阪/徹(以下、上阪氏)が、ゴーストライターという言葉がネガティブに聞こえるという理由で、自著にて「ブックライター」という呼び名を使いはじめたことが契機と言われている。実際、上阪氏が手がける本は年間10冊を超える。

簡単に上阪氏の経歴を紹介したい。アパレルメーカーのワールド、リクルート・グループなどを経て、94年よりフリーランスのライターとして独立し、雑誌や書籍などで幅広く執筆やインタビューを手がけている。著書に『なぜ今ローソンが「とにかく面白い」のか?』(あさ出版)、『成城石井はなぜ安くないのに選ばれるのか?』(あさ出版)、『職業、ブックライター。』(講談社)など多岐にわたる。

今回、紹介するのは、上阪氏の近著『〆切仕事術』(左右社)。上阪氏はフリーランスで仕事をしていることから、〆切が最優先という考え方を説いている。上阪氏のプロフェッショナルなフリーランスとしての、時間術・仕事術は大変興味深い。

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■仕事の〆切といかに向き合うかが重要

上阪氏が提唱していることは非常にシンプルだ。例えば、「睡眠時間は十分にとる」「些細なことでもメモにとる」「体調の悪いときには無理をしない」。あたり前のことがシンプルに書かれている。

ところが、上阪氏が所属しているのは出版業界。「〆切は守らないのが当然」「納品するまで契約書はない」「原稿を書いたのに出版されない」「出版されたのに印税はまだぁ?」みたいな慣習が残る業界。そんな出版業界に属しながら、〆切を一度も遅れたことがない、時間術や仕事術と考えれば、すごいとは思わないだろうか。

「発注先に『本当に、〆切を守られるんですね。またぜひ、仕事をお願いします』と言われて、実際にまた仕事がやってきたりすれば本当にうれしい。〆切さえ守ればいいわけではありませんが、ひとつの信頼はもらえたのだろうな、と実感します。」(上阪氏)

信頼は、人間関係の最強の武器、と言ってもいいと思います。それを獲得できる近道のひとつ、ということになれば〆切を守ることもまた、最強の武器になりえる、とも思うわけです。」(同)

もっとも、〆切を遵守することが当然の業界においては、これ自体がめずらしいことではない。〆切とどのように向き合うかが大切になってくるのだと思う。実際に、上阪氏は次のように向かい合っているそうだ。一部を紹介したい。

「〆切に追い立てられないようにすることです。〆切をストレスにしない。〆切を嫌なものにしない。〆切をポジティプにとらえて、うまく付き合っていくのです。繰り返しになりますが、あらゆる仕事には〆切があります。仕事は〆切によって動いている、あるいは自分は、〆切によって動かされている、といってもいいと思うのです。」(上阪氏)

「このとき、いつも誰かが設定した、〆切で動かされているとすれば、どういう状況でしょうか。言ってみれば、常に誰かに支配され、誰かにコントロールされている窮屈な状態なのではないか、と思えるわけです。」(同)

■理想は〆切を自分でコントロールすること

本書は、単なる時間術や仕事術の本ではない。おそらく上阪氏が本書を通じて言いたいことは、プロフェッショナルイズムを持てということではないかと思う。

「〆切は、自分でコントロールする意識を持つ。誰かにコントロールされる仕事人生にしないためにも、〆切は他人に委ねないほうがいいのです。もちろん、最終的な〆切は他人が作ることになったとしても、自分のものとして消化し、自分でコントロールする意識を持つのです。」(上阪氏)

「〆切を自分でコマ割りとして設定する中で、最もノツている時間にやりたい仕事を入れたり、とリズムを作っていくのです。そうすることで、一日の仕事を充実したものにしていくことができる。頑張ったぞ、という達成感を得ることができる。明日もまた頑張ろう、という余韻を残すことができる。」(同)

〆切のない仕事はありえない。だからこそ、真剣に向き合わなければいけないのが〆切。既存の、時間術・仕事術に飽きた方におすすめしたい。

尾藤克之
コラムニスト

<PS>

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