あと数ヶ月もすれば新人が入社してくる。新人教育でまず必要なことはマナーと考えている人も多いことだろう。では、次のシチュエーションを提示したい。電話があった際、メモを置く、口頭で伝える、正しいのはどちらだろうか?
西出ひろ子(以下、西出氏)は、マナー講師である。主な著書としては、28万部のベストセラーを記録した『お仕事のマナーとコツ』(学研) があり、2010年「NHK大河ドラマ・龍馬伝」にてマナー指導を担当するなど活動は幅広い。日本でもトップクラスのマナー講師として知られている。
■簡単そうで難しい電話対応
――電話対応は慣れないと意外と難しい。新入社員に話を聞くと「一番緊張する」「苦手」という声も聞かれる。相手先との電話だけではなく、会社の同じフロアにいる全員に話す内容を聞かれるからである。
「社内の人に電話がかかってきて、その人が外出していたり、席を外していた場合はどのような対応をすればいいのでしょうか?次の2つが考えられます。(1)電話がかかってきたというメモを置く。(2)電話がかかってきたというメモを置き、戻ってきたら口頭でも伝える。これは後者の、『メモに加えて、口頭でも伝える』というほうが安心です。」(西出氏)
「メモを置いておくだけでは、そのメモに気づかない可能性がありますし、メモに気づかないうちに紛失いってしまう可能性もあります。急ぎの用件なのに、メモを置かれた人が見過ごす可能性もありますね。」(同)
――まずは念を押すことが大切だ。メモを置かずに、口頭だけで伝えるというのも、避けるべきだろう。
「人によっては、会社宛に届いたメールを個人のメールアドレスに転送できるように設定している人も多いです。外出している人に電話があったことを伝えるには、メールは便利なツールになります。また履歴が残りますのでトラブル防止にもなります。」(西出氏)
――これは誰に電話が掛かってきたかにもよるが、機密情報が多い上位役職者(役員クラス)への連絡であればメールも効果的である。以前、次のようなことがあった。
A社から私宛に連絡があった際、電話に出た高橋社員(仮名)は、「尾藤さん、いまどちらかな。そろそろ来る予定なんだけどな?」という質問に対して机のメモを見ながら次のように答えたそうだ。「尾藤はB社を訪問しています。終わり次第、A社に向かう予定になっております。ご安心ください」。以降、伝達方法を徹底したことは言うまでもない。
■正しい電話メモの取り方
――電話に出た人は、その内容をどの範囲まで残すべきなのだろうか。
「基本的には、(1)電話を受けた日時、(2)相手の会社名と名前と連絡先、用件、(3)△△の件ということで、○○へ申し伝え、折り返しご連絡をするようにいたします、などと復唱し、内容に間違いがないよう正確に伝言することです。」(西出氏)
「相手は担当者以外の人には話したくない用件で連絡をしてきたのかもしれません。その場合は、要件を聞く必要はありません。善かれと思ったことが『内容を突っ込んで聞く無神経な人だ』と思われては残念です。」(同)
――ただし例外もある。それはクレームの場合だ。実務に精通していない新入社員はクレーム対処することが難しい場合がある。失礼の無いように承って他の社員に代わってもらうことが好ましいだろう。
頭がいい人は、電話があったことをメモと口頭で伝える。残念な人は、電話があったことを伝え忘れ、信頼を失う。電話の対応ひとつで印象が大きく変わることを、覚えておきたいものである。あなたはどちらだろうか。
参考書籍
『頭がいい人のマナー 残念な人のマナー』(すばる舎)
尾藤克之
コラムニスト
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