トランプ大統領が米航空会社首脳との会合の中で「2、3週間後くらいに税に関する驚くべき発表をする」と発言したという報道がなされました。この2、3週間後というのは2月28日に予定されている上院下院議会向けの演説の場のことを言っているのでしょう。それまで112円台だったドル/円は一気に113円後半まで上昇しました。
トランプ大統領は減税対策として法人税と所得税の大幅減税と相続税の廃止を公約に掲げています。一般的に減税は総需要を増加させて国民所得を増加させる効果がありますので、米ドルが買われます。しかし、10日12時時点ではトランプラリー再びという雰囲気ではありません。午前中に113.797円まで上昇しましたがその後は緩やかに下落しています。
その理由は2つあるでしょう。1つは日本時間の11日に予定されている日米首脳会談の行方を見守っているからです。この会談で「プラザ合意」が結ばれるのでは、という懸念があるのです。プラザ合意では、当時のレーガン大統領が日本との貿易赤字を解消するためにドル高是正を主導しました。もちろん、同合意は米国単独ではなく各国も協調してドル安を実現させたので今回は各国が協調するという場面はイメージしにくいです。
もう一つは、トランプ大統領自身が米国にとってドル高がいいのか、ドル安がいいのかを補佐官に電話で相談する程の迷いが生じていることをハフィントンポストが報じたからでしょう。ひたすら低姿勢で日米関係の構築を試みる安倍首相との会談を前に、自分の立ち位置を少し見失ったのでしょうか。投資家もこの報道を見て「おい!どっちだ 笑」と思ったはずです。
もしそうならば、レーガン時代に日本が受け入れざるを得なかった「日本車輸出の自主規制」や「プラザ合意」を結ばされることはないかもしれません。しかし、前回書いた記事の中でトランプ大統領の通商政策の担当者ナバロは著書「米中戦わば」の中で米国経済の復活のためには輸入規制をして貿易赤字の削減こそ必要と書いてありますので油断できません。
もちろん、著書では中国が対象です。今はレーガン時代と異なり米国の貿易赤字の相手国1位は日本ではなく中国であり、赤字額の47.3%も占めています。先日の米貿易収支で日本は2位に浮上してしまいましたが赤字に占める割合は9.4%で中国の5分の1程度ですが、トランプ大統領がこのデータをどう見るかです。
レーガン大統領と中曽根首相は「ロン-ヤス関係」と呼ばれる信頼関係を築いたといいますが、自動車輸出の自主規制やプラザ合意まで結ばされていますからね。今回はどうなるでしょうか。
東猴史紘