自衛隊が駄目なのはカネがないから、という思考停止

清谷 信一

装備のレベルが問われる陸自の救護体制(陸自サイトより:編集部)

あまりにショボイ自衛隊の緊急キット。隊員が撃たれても助けられない!?

例のSPA!の記事です。
ある意味ぼくの後追いの記事ですが、色々と問題点はあるにしても、こういう記事が出ること自体は歓迎すべきことです。

ですが結論が頂けない。

傷病者の命を救うためには、すぐに止血などの応急処置をしたら後方に送り、緊急病院に搬送する必要があります。傷病兵を搬送するための車両や航空機、その輸送するための装置もシステムも構築されていません。正面装備や燃料を減らして備品を買おうという感覚では誰も救えなくなります。

この個人携行品の問題は、やっと国会で取り上げられるところまできました。通常国会に衆議院に「第一線救急救命処置体制の整備に関する法律案」が出されています。少しでも自衛隊員のための装備品を整備してほしいとおもいます。ただ、法律ができても、その装備品を買うための予算を出さなければ何にもなりません。どこかを減らせば、別の何かが致命的になります。何もかも足らないのですから、何も減らしてはいけないのです。

やっと国会で取り上げられたのは、ぼくが多く記事を書き、記者会見で幕僚長や大臣に執拗に質問したからでしょう。
それで10名以上の関係将校が更迭されたようです。それで止血帯が、よくなったり、数が増えたりはしたようです。
恐らくは内部の人間に働きかけても、官に誤りはない、と一蹴されたでしょう。

この著者の一つ覚えで、「悪いのは予算が足りないことだ」という短絡です。諸外国の3、4倍でヘリを買ったり、7、8倍で小銃を買っていれば金欠になるのは当たり前の話です。

例えば、手取り30万円のサリーマンで、同僚が600円とか、800円のランチを食べているのに、付き合いがあるからと、馴染みの店で同じようなランチを5千円とか6千円で食べていたらどうでしょう。お小遣いが足りなくなるのは小学生でも分かる理屈です。しかも実は質も低くて、油が古くて胸焼けしそうな感じの店で、コストパフォーマンスは更に悪い。それが国産兵器の実力です。

この手のサラリーマンには給料を増やすよりも、普通の店でランチを食べるようにするほうが、懐を豊かにする方策です。
このライターさんにしもても自分の使っている電車やタクシーに5倍、6倍のお金を使えばどうなるか理解できるでしょう。愛国無罪、自衛隊無謬論では現状は解決しません。

更に申せば、このような現状を知りつつ、危ない海外任務に送り出した、中谷、稲田両防衛大臣、安倍総理も批判すべきだと思いますが、安倍政権は全て正しいと肯定するのでしょう。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2017年2月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。