今日は新作レビューはちょっとお休みして、お蔵入りした映画の話を少しだけ。
少し前の話になりますが、アメリカ映画「バース・オブ・ネイション(The Birth of a Nation)」を見る機会を得ました。
ストーリーは、1831年にバージニア州サウサンプトン郡で奴隷反乱を起こした、実在のアフリカ系アメリカ人ナット・ターナーを描いた秀作歴史ドラマです。タイトルはD.W.グリフィス監督の無声映画「國民の創生」の原題と同じで、皮肉を込めてつけられたとのこと。
サンダンス映画祭、トロント国際映画祭をはじめ、世界中で高い評価を得て、東京国際映画祭でも上映された力作でしたが、監督・制作・脚本・主演を兼任したネット・パーカーが、過去に起こした事件(レイプ疑惑)が浮上するというスキャンダルが発覚。全米では公開されたものの、興行成績は振るわず、日本での公開も中止に。
同じく黒人奴隷を扱った「それでも夜は明ける」などはアカデミー賞でも高く評価されましたが、今回のように、映画の内容と現実(事件の内容が真実であるかどうかは今だに謎ですが…)とのギャップがこうまであると、さすがに公開は難しかったのか…(悩)。
映画は、暴力シーンやレイプシーンなど、見ていてつらい場面が多いのですが、何かと人種問題や多様性について議論されている昨今、アメリカの知られざる負の歴史を垣間見る貴重、かつタイムリーな作品でした。仮に日本版のDVDが店頭に並んだら、ちょっとだけ思い出してみてください。
この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年2月17日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は「第29回東京国際映画祭」ウェブサイトから)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。