さて、木曜日に国際軍事見本市「IDEX2017」が閉幕しました。現在パリに移動しております。今回のIDEXでは中国企業企業の出展が恐らくは過去最大となりました。
中国の装備は年々高度化しております。次第に欧米諸国の市場を荒らすようにもなっております。そして、コンポーネントレベルの開発の裾野も広くなっております。
その力の根源は政府が予算を投入していることもありますが、輸出です。輸出はお客様があり、NGをだされれば商品は売れません。
売れなければ、頭を使うわけです。より高度な技術を開発する、品質を向上させる、コストを低減する、カスタマーサポートを充実する等などです。
上の二つは装甲メーカの展示ですが、複合装甲や耐地雷装甲などかなりのレベルに達しています。
中国防衛産業と百万光年ぐらい遠いところにいるのが我が国です。
いまだに根性が「国営企業」です。天下りさえうけれれば、どんなくずでも買ってくれる、諸外国の現状に目むけることなく、内向きの社内政治が最優先の防衛省が唯一のお客さんです。
しかも大手企業の防衛部門は社内では規模が小さく、全社的な協力も得られない。
これでまともな開発や製品かできるずがない。何のために国産装備を開発、調達しているのか。その目的が不明確で、開発調達という手段が目的化しています。
しかも本来必要な投資を行わず、10式戦車や機動戦闘車なんて必要性が低いものに大金をかけて、国際的にみみて何倍も高い金を払って74式や国産MININMI機関銃のようなくずを長年調達してきたわけです。諸外国の何倍ものコストを払って防衛産業が発展するどころが、まともなコピーすらできないレベルが我が国の防衛産業であり、それを是としてきたのが防衛省です。
それまた、産経新聞あたりは提灯記事を書くから、「頭の悪い保守の論客」とか、自分が誇れるのは日本人であるいう事実しかない頭の悪いレッドネックのような自称愛国者が、自衛隊無双を夢想します。
防衛省の取材や記者会見を独占している大手メデイアもこういうことはほとんど書きません。こういう胡乱な装備調達を続けるならば、防衛費は1兆円ぐらい削って装備は全部輸入に変えた方がいいでしょう。その1兆円を子育てやら、就職支援など振り向けて将来への国力の基盤作に回す方が、トータルとしての安全保障に貢献するでしょう。
今回のIDEXで出展していた日本企業はNEC、川重、NTTデータの三社です。ですがいずれも軍事市場に本格的に参入するつもりはなく、デュアルユース製品だけをうりたいという公式見解があります。特にNECにその傾向が強いように思えました。だったら、新型の野戦通信システムなど展示しなければいいのに、と思います。これを是非と諸外国に売り込んで欲しいものです。そうすればわずか2メートル先でも通じない、伏せると通じないという「性能」やコストもだめだして大恥を書くでしょう。ですがそこから学ぶことができます。
それをしないからウリナラマンセー的、夜郎自大な自己評価が覆りません。
意識を変える、輸出もできない企業は防衛産業から撤退すべきです。税金を食い物にするのが企業、特に上場企業の使命ではないでしょう。
むしろ防衛相に対しても諸外国の企業と競合するデュアルユース製品だけを売ればよろしい。
各大手メーカの社長もこのような見本市を視察すべきです。それで自社の実力がどのくらいものか、把握すべきです。外国のコンサルタントを雇ってもいいでしょう。
そういう経営的な情報収集に基づいた決断ができず、社内政治うつつを抜かしているから、東芝みたいなことになるわけです。東芝なんぞ今に間に至っても防衛部門の売却も言い出していないようです。NECも富士通も経営の実態は内実は結構悲惨な状態です。とりあえず利益はでるが、先がない防衛産業を続けるのか、すっぱりやめるか、そろそろ決断すべきではないでしょうか。
編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2017年2月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。