なぜ、人に迷惑をかけてはいけないのでしょうか。子どもを叱るとき、よく言う言葉です。「他の人の邪魔をしてはいけない」「人に迷惑をかけない」というのは、集団社会において当たり前のことですが、理解させることは簡単ではありません。
この問いに対して、わかりやすい示唆があるので紹介したいと思います。『考える力を育てる 子どもの「なぜ」の答え方』の著者であり、浄土真宗本願寺派僧侶、保護司、日本空手道「昇空館」館長も務める、向谷匡史(以下、向谷氏)の見解です。
お申込みは上記バナーから。
内容はこちらでご確認ください
人に迷惑をかけてはいけない理由は
――「あなたの身勝手で私に迷惑をかけないでください。そのかわり、私もあなたに迷惑をかけませんから」。これが、社会生活の基本です。
「私は僧籍を得て仏法を学ぶなかで考えが変わってきました。人に迷惑をかけてはいけないのは当然ですが、『私たちは人に迷惑をかけなければ生きていけない存在である』ということに目を見開かされたからです。“迷惑”というのは、直接的な被害にとどまらず、周囲の手助けやお世話によって生かされているということです。」(向谷氏)
「つぎのような発言をする人を見かけることがあります。『私の自慢は、誰にも迷惑をかけてこなかったことだ』と。しかし、『迷惑をかけていない』と考えている、そのこと自体が傲慢と言っていいでしょう。」(同)
――私たちはお互いが助け合い、お互いが迷惑をかけ合いながら生かされていることを忘れてはならないと、向谷氏はつづけます。
「迷惑をかけちゃいけない理由を問われて、『迷惑をかけないのが社会ルール』という答え方で終わってしまったのでは、正しい答えではあってもいさかか薄っぺらいものになるのではないでしょうか。『キミが大人になっていくまでに、どれほどの人と関わり合っていくの』とまずは考えさせます。」(向谷氏)
「そのうえで『親から学校の先生、友達……。電車に乗るのだって、鉄道会社があって、運転手さんがいて、車掌さんがいて、駅員がいるから乗れる。ものすごい数の人が関わり合っている。キミが生きていくためには、数え切れないくらいの人のお世話になっているということだね』と言い聞かせるのです。」(同)
“おかげさま”の本当の意味は
――そして次のように諭すそうです。
「だから、自分ひとりで生きていると思っちゃだめ。みんなのお陰だと感謝して、キミも、みんなのために力になってあげることが大切なんだ。“迷惑をかけちゃいけない”ということの本当の意味は、“迷惑をかけていることを忘れてはいけないよ”ということなんだね。と話せばいいでしょう。」(向谷氏)
――読者の皆さまはいかがでしょうか。“人に迷惑をかけてはいけない理由”をご理解いただけましたか。
「私たちは日常の挨拶で“お陰さま”という言葉をつかいます。『陰』は神仏などの陰のことを言い、その庇護を受ける意味として用いられますが、仏教の視点から言えば『木陰』のことをさします。肌を焦がす真夏の日差しも、木陰の下に入れば凉しくなります。このとき木は、人々が涼をとるために陰をつくってくれているわけではありません。」(向谷氏)
「それでも、木に、『ありがとう』と感謝する。その心が大切であることを、どうぞ、子どもに話してあげてください。」(同)
――なお、本書は子供向け教育に書き上げられたものですが、事例にリアリティがあることから大人にもお勧めできます。上司のコネタとしても役立ちそうです。多くの事例を理解することで物事の正しい道筋を見つけられることでしょう。
尾藤克之
コラムニスト
<3月3日に締め切ります>
アゴラ出版道場、第2回は今春予定です。それに先立ち導入編となる初級講座が毎月開催中。次回は3月7日(火)の予定です(講座内容はこちら)。ビジネス書作家の石川和男さんをゲストにお招きして“先輩著者”の体験談もお聞きできます(お申し込みはこちら)。
初級講座は、毎月1度のペースで開催しています。1月31日開催の「第4回アゴラ著者入門セミナー」の様子はこちら。