金を無心する相手がいたとする。このように嫌な相手を断るにはどうしたらいいだろうか。「どのように断るか」は人間関係の基本であり同時に最終目標でもある。しかし、嫌な相手は断りにくい場合もある。どのように対処すべきだろうか。
この問いに対して、わかりやすい答えがあるので紹介したい。『考える力を育てる 子どもの「なぜ」の答え方』の著者であり、浄土真宗本願寺派僧侶、保護司、日本空手道「昇空館」館長も務める、向谷匡史(以下、向谷氏)の見解である。
最初に“なぜ嫌か”を理解する
――最初に、「なぜ、断れないのか」を真剣に考えなくてはいけない。向谷氏は次のように問いかけるそうだ。
「お金の話に例えるとわかりやすいでしょう。道場で稽古の休憩時間に雑談をしていたときのことです。話の成り行きで、こんな問いかけを子どもたちにしたことがあります。『クラスメートから100円貸してと頼まれたとき、貸すのが嫌だった場合に堂々と断れるかい?』」(向谷氏)
――「断れる」と明確に答えた子供は少なかったようだ。「堂々とは断れない」「100円だったら貸しちやうかも」、そのような答えが大半をしめていた。理由をたずねると、次のようなものが多かった。
「理由を問うと、『断ったら悪口を言われるかもしれない』『100円だから』と同調しているものが多かったです。平気でモノを頼んでくる人というのは、断りにくいスレスレを言ってきます。『100万円貸してください』と言ってくれば『無理です』と断れますが『10万円、なんとか貸していただけませんか?』と頼まれれば微妙です。」(向谷氏)
「貸せない金額ではない場合、それを断るということは、『お金を貸すこと自体が嫌=ケチ』か、『あなたに貸したくない=あなたが嫌』のどちらかです。」(同)
――この心理が働くから不本意ながら貸すことになる。平気で借金を申し込んでくる人も、この心理を知っており、そこにつけ込む金額を口にする。
要求がエスカレートする理由
――しかし、うまく断らなければ要求は次第にエスカレートしていく。
「『嫌われたくない、悪口を言われたくない、険悪な関係になるのは嫌だ』という思いから、『100円貸して』『本を貸して』『掃除当番を代わって』という頼み事が断りにくくなるのです。この自分の心理を認識したうえで、丁重に断ればいいのです。」(向谷氏)
「『ごめんね。私のお小遣いはママに預けてあるから貸せないの』『ごめんね。いまお金を貯めているので貸せないの』。断るのが苦手な子は、こんな言い方をすればいいと説明してあげてください。」(同)
――こちらが意を尽くしても。断れば悪口を言う子もいる。頼みを聞いてあげると、どんどん要求がエスカレートしていく。
「非行少年の恐喝が暴力事件にエスカレートしていくのは、恐喝に何度も応じてきた少年がついに耐えかね、断ったときに、相手がカッとなって起こるケースが少なくないのです。勇気をもって最初からきちんと断る。『ノー』と言えるかどうか、人生はここが大切であると教えてください。」(向谷氏)
――なお、本書は子供向け教育に書き上げられたものだが、ケースにリアリティがあることから大人にもお勧めできる。上司のコネタとしても役立ちそうだ。多くのケースを理解することで物事の正しい道筋を見つけられるかもしれない。
尾藤克之
コラムニスト
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