トランプ米大統領の予算教書、勝ち組と負け組は ?

トランプ米大統領が16日に公表した予算教書は、予想通り2018年度(2017年10月~18年9月)の国防費や治安強化への割り当てが拡大しました。トランプ政権が”力による平和”を目指すだけに、”行政予算予算局(OMB)のマルバニー局長をして、「ハード・パワー(軍事力と経済力を最大限活用する)予算案」と呼ぶだけありますね。”ソフトパワー(外交など交渉に重点を置く)予算ではないと言い切るように、煽りを食らった省庁の一つは米国務省です。

裁量支出の焦点を当て、高齢者向け医療保険(メディケア)など社会保障費や税制を無視したいわゆる”skinny”な簡素版の予算案の勝ち組と負け組は、以下の通り。

「米国第一」であるだけに、国防費や国土安全保障省の支出が拡大するのは予想通り。しかしながら、それぞれの政府支援が失われしまい、本当に「米国第一」なのか疑問が生じます。それというのも予算縮小で例えば住宅都市開発省では公共住宅の再開発が、財務省では地銀や信用組合が、労働省では高齢層の職業訓練プログラムが打撃を蒙りますよね。その他の省庁でも、経済にインパクトを与えること必至。環境保護局は31%もの予算削減で、職員15,000人のうち3分の1以上に相当する3,100人を解雇する必要が生じるといいます。

国防費や国土安全保障省、退役軍人省の予算拡大で雇用増加が期待できるものの、果たして他省庁での予算削減の影響を吸収できるかは疑問の余地が残ります。インフラ投資や税制改革、規制緩和で成長加速を支援する計画であるため、各省庁の支援プログラムの予算割当に重点を置かなかったのかもしれません。

国務省の予算大幅削減は世界における米国のプレゼンスを大きく変化させる可能性が濃厚で、共和党のミッチ・マコーネル上院院内総務やマルコ・ルビオ上院議員など有力議員からも反対の声が根強い。反トランプ派といっても過言ではない共和党のリンゼー・グラム上院議員は予算教書発表前から「dead on arrival」、つまり上院に提出されてすぐ廃案になると豪語していました。

トランプ陣営にとって、反対意見が出てくるのは想定の範囲内でしょう。あとは5月を目途に公表する税制改革や義務的支出を含んだ予算教書を提出し、ひとまず共和党といかに落としどころを探るかが焦点となってきます。

米大統領選からトランプ氏の非公式アドバイザーを務めるニュート・ギングリッジ元下院議長いわく、同大統領を「アンドリュー・ジャクソン元米大統領のように攪乱させ、セオドア・ルーズベルト元米大統領のように精力的で、P. T.バーナム氏のような興行師だ」と捉えます。いずれ劣らぬ弁士がそろうこともあり、言い得て妙ですよね。トランプ米大統領は簡潔かつストレートな表現でアメリカ人の支持を獲得してきましたが、共和党にはどんな技を使ってくるのでしょうか?。

(カバー写真:Gage Skidmore/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2017年3月17日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。