「勉強しても、身についている気がしない」「勉強しているのに、ちっとも効果を実感できない」「勉強しているのに、全く自己成長につながっていない」「勉強しても、社内の評価も給料も上がらない」。こんなふうに思ったことはないだろうか。
精神科医、作家として、精神医学や心理学の情報を発信している、樺沢紫苑(以下、樺沢医師)は、「日本で最もインターネットに詳しい精神科医」として、雑誌、新聞などの取材やメディア出演も多い。今回は、「正しい勉強法」について伺った。近著に『ムダにならない勉強法』(サンマーク出版)がある。
■ムダな勉強は人生の時間のムダである
――数ある勉強法の中でも、400年続く「究極の勉強法」がある。おそらく400年以上も続いている勉強法は、そう多くはないだろう。樺沢医師は次のように答える。
「その究極の勉強法とは『守破離』です。『守破離か そんなの知っているよ』と思った人も多いでしょう。では、『守破離』の意味を説明できますか? 実際に周りの人に聞いてみましたが、名前は知っていても、ほとんどの人は説明できませんでした。説明できないのであれば、それは知らないのと同じです。」(樺沢医師)
「『守破離』は、茶人·千利休の歌『規矩(きく)作法守りつくして破るとも離るるとても本を忘るな』をもとにしているといわれます。茶道、武道、伝統芸能などの世界で、師弟関係、学びの姿勢を示す重要な方法論として知られます。」(同)
――樺沢医師は勉強法を研究するなかで、学問もビジネスもスポーツも遊びも、「守破離」以上に「学び」をムダなく効率良く取得する方法はない、という結論に達したそうだ。
「守破離を簡単に説明すると、次のようになります。『守』(初級)は、師についてその流儀を習い、その流儀を守って励むこと。『破』(中級)は、師の流儀を極めた後に他流を研究すること。『離』(上級)は、自己の研究を集大成し、独自の境地を開いて一流派を編み出すことと言い換えられます。」(樺沢医師)
「基本を徹底的に真似て、しっかりと習得する。次に基本を踏まえたうえで、他の方法やいろいろなパターンを試してみる。最後に『自分流』を確立する。これが、『守破離勉強法』です。」(同)
■「リリリのおじさん」を知っているか
――あなたは、「リリリのおじさん」を知っているだろうか。守破離の話をすると「なんだ、守破離なんか知っているよ」と言う人が多い。しかし、知っていても実践していないと意味がない。このような人を総じて「リリリのおじさん」と称するとのことだ。
「私の経験からいうと、守破離を実践できている、あるいは実践しようとしている人の割合は、せいぜい10 %です。ほとんどの人は、ステップを踏まないで学ぼうとしている。だから効率が悪いし成長しない。では、どんなふうに学ぼうとしているのかというと、それは『離離離(リリリ)』です。一言でいえば『自分流』です。」(樺沢医師)
「自分流でスタートする。自分流で試行錯誤をし、自分流のスタイルを確立したつもりになっている。しかし、全く基本がなっていないので、上達もしないし成果もあがらない。そんな、『リリリのおじさん』が多いのです。」(同)
――基本も勉強せずにいきなり「自分流」を目指しても「リリリのおじさん」から脱却することができない。つまり、時間のムダに終わることになる。
「ところが、なぜか初心者ほど上級ノウハウを知りたがるのです。私は、 2011年頃から、Facebookの使い方、活用法をお伝えするセミナーを開催していました。映画『ソーシャル・ネットワーク』が公開され、空前のFacebookブームが勃発しました。新しくFacebookを始めた人たちが、いきなり何百万人も現れたわけです。」(樺沢医師)
「そこで、『基本テクニックをわかりやすく学べます!』と初級セミナーの募集を開始しました。24時間で3人の申し込みしかありませんでした。次に、『日本最新、最先端のFacebookの上級者向けノウハウが学べます!』と方向転換したところ、24時間で30人の申込みがあり、定員100名のセミナーが3日で満員になりました。」(同)
――ところが驚く結果が待っていた。参加者の約9割がはじめて数ヶ月のFacebook初心者だったのである。セミナーを告知する際には「最先端が学べる」「上級ノウハウ」が学べると記載するほど初心者が殺到するが、参加者は「リリリのおじさん」なのである。
本書は、このような様々なケースを使いながら、わかりやすく勉強法について解説している。正しい勉強法に関心のある方には参考になることだろう。
参考書籍
『ムダにならない勉強法』(サンマーク出版)
尾藤克之
コラムニスト
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