【映画評】フレンチ・ラン

渡 まち子

革命記念日前日、パリ市街地で爆弾テロが発生する。捜査を担当することになった、CIA捜査官ブライアーは、容疑者に浮上したスリの若者マイケルをとりあえず確保する。マイケルの無実を確信したブライアーは、マイケルのずば抜けたスリのテクニックを見込んで、捜査に協力するように持ち掛ける。はみ出し者のCIA捜査官とスリという“ありえない”コンビは、次に予告された新たなテロを阻止するために真犯人に迫っていくが…。

爆弾テロの危機に瀕したパリを舞台にCIA捜査官とスリの若者がタッグを組んで街を守るために奔走するサスペンス・アクション「フレンチ・ラン」。かつてイラクで命令を無視して行動した過去があるCIA捜査官ブライアーは一匹狼。一方、無実の罪で逮捕された若者マイケルは天才スリ。二人のはみ出し者がコンビを組む本作は、典型的なバディ・ムービーだ。立場が正反対の二人の共通点は、パリで捜査するに当たり、共に異邦人であること。ルールに囚われない一匹オオカミとはいえ、CIAに所属するブライアーにとっては、アメリカの情報機関が海外で活動する際の限界もあって、自由に動けないこともある。そんな難関を、スルリとすり抜けて見せる小悪党のマイケルは、ブライアーにとって手足のような存在となる。二人が大規模テロを阻止するべくパリ中を走り回る様はとにかくスピーディーで、もちろんお約束の絆も生まれる。

注目したいのは、この映画が、フランスの、ひいてはヨーロッパの現状を、しっかりと照射していることだ。テロの脅威にさらされた大都会、移民問題、右派と左派の対立。毎日のようにニュースで流れるリアルが映画の中に映り込んでいる。もちろん、本作はあくまでも娯楽作で、堅苦しさなどは皆無なので安心して鑑賞してほしい。「マンデラ 自由への道」での演技で知名度を上げたイドリス・エルバが、身体をはったアクションを披露して楽しませてくれる小品だ。
【65点】
(原題「THE TAKE」)
(英・仏・米/ジェームズ・ワトキンス監督/イドリス・エルバ、リチャード・マッデン、シャルロット・ルボン、他)
(現代性度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年3月22日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式YouTube動画より)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。