政治家の仕事はみみっちい財布(税金)の話をすること

渡瀬 裕哉

政治家にビジョン形成を求めること自体が時代錯誤ではないのか

宇佐美典也さんの「都議選は「空前絶後で超絶怒涛な公約」を待望してます」を読んで、やはり元官僚の方は言うことが違うなと思いました。

政治家はビジョナリーな空前絶後で超絶怒涛の公約を語ることよりも、現実の財布(=税金)の話をすることが本来の仕事であり、税支出の使途の妥当性を問うべきです。彼らは納税者の代表であって妄想を語ることは仕事ではありません。

政治家や官僚に社会のビジョン形成を求めること自体が時代錯誤であり、革新官僚的な発想で「政治にビジョンの提示を求める」という行為をやめていくべきでしょう。

東京に基盤を置く政党が地方交付税や地方バラマキ政策を問題にするのは当たり前

筆者も維新の会の「議員定数5分の1」は全く意味不明だと思いますが、都民ファーストの音喜多都議が地方交付税の在り方を問題にすることは東京都に基盤を置く政党の幹事長として至極当然のことだと思います。

年間7兆円以上も東京都内から流出している「みみっちい」税金の話を看過できるほど、東京都民は非現実な世界に生きているわけではありません。

宇佐美さんが主張する「東京の出生率を2.5まで引き上げる」とか、「75歳まで働ける社会」とか、「観光消費を倍増させて経済を成長させる」とか、「生活コストの引き下げ」などは東京都民の手に資金が残っていればある程度解決可能な問題です。このような政治家の対処療法的な個別のレトリックではなく、東京都からの税流出を防止することは問題の根治に繋がります。

東京に基盤を置きながら、都議会だけでなく国政に候補者を立てる準備を推進している「都民ファーストの会」の都議会幹事長が税金の話をすることは当たり前です。

まして、筆者も音喜多氏も東京出身者であり、それらの人々の声、そして地方から出てきて東京で子育てしている人々の声を代弁しても何ら不思議でもありません。

また、東京と地方の共存共栄とは、東京一人勝ち&地方へのバラまき、を前提とした関係ではなく、東京と地方が独立・協力・競争しながら一緒に栄えるものだと考えます。

必要とされるものは政治家の「口約束」ではなく、民間の力を信頼する「契約」だということ

筆者が都民ファースト会などに期待する都議会議員選挙の公約は、宇佐美さんが共感を示したような石原氏の「〇〇やります」的な公約ではなく、「〇〇やりません、東京都民の手にお金と権限を戻します」という契約です。

豊洲新市場一つをとっても移転するか否か以前に、行政機関は意思決定までに時間がかかりすぎて、元々想定していた事業環境と大きく変化が生じてしまうことはザラだと思います。(豊洲市場は大赤字!金融の視点で見える事業面での大問題)小池知事が移転を早期に実行したところで、東京都庁が無能な投資家であることに違いはありません。

宇佐美さんと筆者は同年代ですが、筆者は東京都の政治家と都庁の役人に夢を見せてもらう必要はありませんし、むしろ政治家と役人は余計なことをせずに粛々と行革、減税、権限移譲・規制緩和を進めてほしいものと思います。

宇佐美さんが我々の世代を代表されるようなことをおっしゃっていたので本稿に引用してしまって申し訳ありませんが、意見が違う人もいるよということで大目に見てください。

政治家が考える「日本の中で東京がどのような役割を果たすべきか」を具体化した「空前絶後で超絶怒涛な公約」でげっそりさせられるよりも、日々をコツコツと生きている東京都民の生活が豊かになる政策をやってもらう方向性でお願いしたいものです。

これ以上東京都民の税金を政治家や役人のおもちゃに使う行為をやめること、次回の東京都議会議員選挙に一都民として唯一期待しております。起きながら見る夢とは民間人が努力する中で見るものであり、政治家ができることはそれを邪魔しないことです。

本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などは[email protected]までお願いします。

 

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