次の2つの文章の違いを説明できるでしょうか?
1 あの店はうまいが、高い。
2 あの店は高いが、うまい。
11の文章は「高いから入るのを止めよう」というニュアンスがあるのに対し、2の文章は「うまいから入ろう」というニュアンスが感じられますよね。
接続詞を入れるとしたら、「しかし」という転換が入るはずです。ついでに、冒頭に「確かに」を入れるともっとわかりやすくなります。
1が「確かにあの店はうまい。しかし高い」となるのに対し、2は「確かにあの店は高い。しかしうまい」となります。
このように「しかし」という転換の接続詞が入る場合、日本語表現ではほとんどの場合「しかし」以下に「主張」(言いたいこと)が入ります。
1の文章だと「高い」が主張となり2の文章だと「うまい」が主張になります。その結果、次に取るべき行動や言葉が正反対になるのです。
では、次の2つの文章の違いはいかがでしょう?
1 あの店はうまい。しかし、高い。
2 あの店はうまい。ただし、高い。
2の文章では「しかし」という転換の接続詞を用いているので、「高い」が主張になり、「高いから入るのを止めよう」と続くことは既にご理解いただけましたよね。
2の文章でも、「高いから入るのを止めよう」と続きそうなニュアンスがあります。しかし、そのように断定するに少しばかり躊躇を感じますよね。
なんだかモヤモヤとしたような…。
実は、「ただし」というのは補足という意味の接続詞なのです。あくまで主張は「ただし」の前の「あの店はうまい」にあるのです。ざっくばらんに言ってしまえば、「ただし、値段は高いよ〜。それでもいいなら入るかい?」というようなものです。
人によっては「補足」された情報を重視して「入るのを止める」人もいるでしょう。覚悟を決めて入る人もいるでしょう。「今日は馬券が当たった」という人は「補足情報」を全く気にしないかもしれません。
同じ「補足」の接続詞である「ただし」には、別の用い方もあります。法律の条文で用いられる「ただし書き」という代物です。
「…は無効とする。ただし、善意の第三者に対抗することはできない」
というような条文の場合、「無効とする」が原則であるのに対し「ただし」以下は例外となる場合がほとんどです。「原則」ただし「〇〇の場合は例外」という構造ですね。
法律の勉強ばかりやっていると「ただし」は例外だとばかり思いこんで、捕捉の意味の「ただし」が理解できない人も案外たくさんいるようです。
よく、法律の勉強は論理的だと言われますが、必ずしもそうとは限りません。高名な学者の書いた法律書の中に論理的に怪しい部分が多々あることも珍しくないのです。
それに比べると、数式で説明する経済学の方がはるかに論理的ではないでしょうか?論理が間違っていると、数式が合わなくなってしまいますから。つまり「法律を勉強すると論理的になる」という俗説は、それほど信用すべきではないということでありましょう。
もちろん、「それほど信用すべきではない」という程度であって、「完全に間違いだ」という意味では決してありません(笑)
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年3月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。