現代アートは美術館鑑賞から「所有」の時代へ

ジュリアン・オピーの作品を鑑賞するセミナーがありました。講師は、お馴染みのアートディーラー三井一弘さんです。オピーはイギリスの現代アートの有名な作家で、日本では電通の本社ビルに設置されている作品や、GMOの熊谷社長のコレクションで有名です。

今回展示された作品も、コンテンポラリーで部屋に飾ると何ともセンスが良く、一目見ただけでオピーの作品とわかる魅力的なものばかりでした。価格は400万円から600万円程度。世界的に知られた作家の作品の価格としては、決して手が出ない価格ではありません。この日もセミナー終了後に3名の方が作品をその場でお買い上げになりました。

日本人のアートとの付き合い方は美術館に行って鑑賞するというのが一般的ですが、欧米では資産として価値があるものを保有するという考え方がより強くあります。実際、現代アートの超高額作品は、ヘッジファンドのオーナーや、企業経営者といった人たちが保有しているケースが多いのです。最近は日本でもゾゾタウンの前澤社長のように60億円の作品をオークションで落札する経営者も出てきており、今後購入して楽しむ日本人が増えてくると思います。

しかし、現代アートの目利きは簡単ではありません。不動産や債券のようにインカムゲインはありませんし、ほとんどの作品は値上りする確率より値下がりする確率の方が高いでしょう。

価値ある作品を手に入れる可能性を高めるのに確実なのは、「買ってはいけない作家」の作品を買わないことです。アートの世界での20年以上の経験を踏まえ、三井さんからどのような作家のどのような作品に注目すべきか、目利きのポイントをお話いただきました。

印象的だったのは、現代アートの重要な作品というのは、過去の美術の歴史との流れの中に位置づけられる意味を持っているという指摘です。例えば、写真のオピーの作品(写真右)は古代のモザイク画(写真左)を意識しており、それを現代のテクノロジーと彼自身の世界観の中で表現しています。このように過去の作品や文化との関係を理解して、作品を鑑賞するとより深い鑑賞ができるようになります。

オピーの他の作品では、日本の浮世絵から構図の影響を受けているものもあります。世界中の美術を研究し、上手に取り入れ作品に反映させているのです。

三井さんの古代からの美術史を俯瞰するような興味深いお話とその中に位置づけられるジュリアン・オピーの作品。上質な美術史の授業を聞いているような面白くとてもためになるセミナーでした。

私も現代アートの作品を保有していますが、セミナーが終わって作品をギャラリーで鑑賞しているうちに、もう一つ欲しくなってしまいました。

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編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2017年4月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。