「スゴいい保育」の新コーナー『スゴいい保育園』。読者のみなさんに希望と驚きをお届けする保育を紹介します。今回は、「オトナな保育」を実践する茶々保育園グループ「茶々むさしこすぎ保育園」へ見学に行かせていただきました!「オトナな保育園」の真意をたっぷり伺いました。
いつかはオトナになる子どもを、ずっと子ども扱いしていませんか?
“オトナな保育園”とは、子どもを必要以上に子ども扱いせず、同じ人間として対等に接するという茶々保育園グループのコンセプトです。それを実現するためには保育者自身がオトナとして振る舞えるようにという行動指針としてのメッセージもあるそうです。そんな”オトナな保育”を実施する茶々保育園グループの理事長・CEO 迫田 健太郎(さこだ けんたろう)さんにお話を伺っていきます。
●訪問園プロフィール
『茶々保育園グループ』とは?
「オトナな保育園」をコンセプトに関東近県12園(2017年4月から14園)を展開する保育園グループ。1979年、埼玉県入間市の”茶畑の真ん中”に第一号園を設立以降、”丁寧に寄り添い、子どもを一人の人間として尊重する”という理念を元に、独自のモノサシを持ち保育を行っている。厚生労働省イクメンプロジェクトのメンバーでもある『おちまさと氏』をチーフブランディングオフィサーに迎え、地域社会との交流を目的とした「ちゃちゃカフェ」の設置や、保育士の地位向上に向けた「オリジナルウエア開発」「スタッフ名刺制度の導入」など、保育業界を変える新たな取組を積極的に行う。2017年4月には、国家戦略特区制度を活用した日本初の都市公園内保育園『茶々そしがやこうえん保育園』の開園を予定。
●インタビュイープロフィール
社会福祉法人あすみ福祉会 茶々保育園グループ
理事長・CEO 迫田 健太郎(さこだ けんたろう)さん
立教大学経済学部を卒業後、アンダーセンコンサルティング(現・株式会社アクセンチュア)へ入社。その後、保育業界に転身し、現在は茶々保育園グループ(社会福祉法人あすみ福祉会)の理事長に就任。前職のコンサルティングの経験を活かし、自ら14か所の保育施設の経営を行う。
社会福祉法人あすみ福祉会 茶々保育園グループ
http://chacha.or.jp
茶々保育園グループが実践する「オトナな保育」
ー「オトナな保育園」というコンセプトの意図を教えていただけますか?
迫田:子どもは、大人の想像以上に能力や感性を備えています。そんな小さな子どもが育つ場所が保育園ですが、”幼稚な場所”にする必要はないと考えています。そして子ども同様、大人だって、保育士だって、充実した時間を過ごせたり、オトナに成長できる場所になったほうがいい、そういうメッセージを表現するのに”オトナな保育園”というコンセプトにしています。
また保育士へ向けた、子どもにとってはじめて会う社会人というオトナですよっていうメッセージもあります。保育士って、なんだか社会人っぽくないというか。そういうところがあると思うんですよね。我々自身もこれって気をつけなきゃいけないことじゃないですか。
ーわかります。保育業界って、保育業界以外へ就職することを「一般企業に就職」って言い方をしたりしますが、保育園だって一般企業ですよね。同時に「サラリーマンから保育士に転職」とか、保育士もサラリーマンなのでは?と。
迫田:そうそう、なんか違和感あるんですよね、そういう視点。しかもそれがいい方向にいいプライドを持つわけじゃなくて、子どもと一緒になって幼稚になっているんじゃないかと。そんな風潮が怖かったんですよね。なので、コンセプトを”オトナな保育園”に変えると同時に、まずカタチからということで色々変えていきました。
ー保育スタッフ全員に名刺を渡されたんですよね。
迫田:そうです。コンセプトと同じ考えからです。名刺を持っているのは社会人だから当たり前のこと。新しいことというより、当たり前だよねっていう認識になってほしいと思います。やはり最初の頃は名刺交換の時に「い、い、今わたすんですか?」って感じでしたけど、徐々に慣れていき、今はとてもスマートです。
ーエプロンのデザインもリニューアルされていますよね。
迫田:はい。普通は保育園っていうイメージのカラフルなパステルカラーなエプロンですが、我々はコーポレートカラーのブラウンを使ったカフェエプロンのようなデザインにしました。保育士保育者本人もそうですし、子どもにとって初めて会う社会人として、かっこいい、素敵な存在でいたいよね、というアプローチです。これもカタチから入っていますが、格好がおしゃれなだけで気持ちも変わると思うんです。
ーそれ以外にはなにかありますか?
迫田:保育士同士もそうですし、子どもたちが保育士を呼ぶ時に下の名前で呼ぶようにしています。○○先生ではなく、○○さんと。これも子供と大人の上下関係ではなく、一人の人間として尊重するという考えからです。
ーオトナな保育園というコンセプトはいつ頃から発信されているんですか?
迫田:まだ1年半前のことです。(インタビューは2016年12月)
ブランディングの変更は今回で3回目くらいですね。3年、5年、とコンセプトをどう伝えるかというのは結構考えてきていて、3年前におちまさとさんとディスカッションしている場でポロっと出てきたコンセプトです。その前まではコーポレートカラーも緑茶の緑に統一していましたが、ガラっと変えました。ただ、誤解を生みやすくなったのも事実です。子ども不在に見えるようです。
今回のコンセプトは正直ちょっとした賭けに出たという側面はあります。よくある「子どもの最善の利益のために」のようなコンセプトがパンフレットに書いてあっても、当たり前過ぎて何も疑問を持てないし、行動を変えることも難しいと思っていて。でも今のコンセプトだとかえってひっかかりがあって、意図を聞いてもらえる、考えてもらえるという利点があります。
ー保育スタッフの反応はどうでしたか?
迫田:最初は大変でした。スタッフも戸惑ったと思います。以前は「おばあちゃんのまなざしをもつ」というものでした。今までのを変えたのでそうですよね。ただ伝え方が変わっただけで理念は変わってないんです。理念は変わっていないけど、それでも難しかった。茶々保育園グループを創業した母でさえ自分の言葉で人に伝えるのに1年かかりました。そこからさらに、スタッフみんながそれぞれ自分の言葉として話してくれることに意味があるので、待って待って待ちました。僕が一番このコンセプトに愛着を持っているのですが、みんなが一丸となって本当に取り組んでいくためには自分たちの言葉にしてほしかった。
社是みたいなのを額に入れて飾った時点で、もう風化していくような気がするんですよね。
コンセプトの意図を聞いているとまさにそうだなぁと思うことばかりですが、それを実際の施設としての保育現場で表現したり、保育者の実施する保育に具体的に落とし込もうとすると、なかなか難しいことが多いのではないかなと思います。次回は実際に「茶々むさしこすぎ保育園」の保育現場に潜入していきます。
次回:茶々保育園の保育現場に潜入!オトナな保育園の現場とは!?
お知らせ:迫田さん登壇イベントのご案内!
【4月19日はみんなの保育の日!】
保育関連業界で働く人、行政・政治、メディア、そして子育て中の人から普段子どもと関わる機会はない「と思い込んでいる」人まで、あらゆるステークホルダーが自分ごととして保育を考え、関わる場を生み出し、「子どもを社会みんなで育てる」ムーブメントを創り出していくスタートの日として制定された「みんなの保育の日」(※)。
4/19当日は、六本木ニコファーレにてイベントを開催します。
(入場無料/授乳&オムツ替えスペースもご用意しています)
詳細はこちら!
http://419.jp/
イベント内のこどもみらいラボ「地域で子どもを育てる」トークセッションにて迫田さんが登壇します。
迫田さんのお話を聞いてみたい!という方はぜひご参加を!
※イベント当日は、下記サイトにてニコニコ生放送も実施します
http://live.nicovideo.jp/watch/lv293012379
※4月19日が4(フォー)19(いく)であることから、同日を「みんなの保育の日」(※日本記念日協会に正式認定取得済)とし、イベントの開催日としました。
編集部より:この記事は認定NPO法人フローレンス運営のオウンドメディア「スゴいい保育」より、2017年3月31日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「スゴいい保育」をご覧ください。