先般、キンドルダイレクトパブリッシングで初めて小説を出版しました。「婚姻無効」というタイトルで、ストーリーを読んでいけば法律知識や実務が理解できるよう工夫したものです。99円と格安です(笑)
紙の本のように献本ができないので、知人等にその旨知らせたところ「Kindleを持っていない」という反応があまりにも多かったのに驚きました。体感的には、9割くらいの知人が持っていませんでした。
「スマホでKindleアプリをダウンロードしたら読めるよ」と返したら「まだガラ携を使っている」という反応も結構ありました(汗)
私自身は、Amazon.jpがKindleを扱う前からアメリカの本家Amazon.comからKindle端末を取り寄せていたくらいなので、随分驚いてしまいました。
しかし、某調査によると、電子書籍を最も利用している20代30代あたりでもせいぜい3割程度で、40代以降はほとんどいないとのこと。しかも、利用目的は漫画が中心とのことでした。
「読み放題」を巡って、一時、出版社サイドがAmazonに敵対的だったことからもっと普及していると思ったのですが、ボリューム的には大したことではなかったようです。作家諸氏が公立図書館での新刊本貸出禁止を求めるのと同じくらいの「(少なくとも)量的には小さな問題」だったのかもしれません。
かくいう私も、Kindleは常時持っているものの、読む本は圧倒的に紙の本が多いというのが実情です。
その理由として、リアル書店で手に取ってみて購買を決定することが多いのと、電子書籍と紙の書籍の値段があまり変わらないことがあります。また、Kindleはかなり目に優しい方ですが、(個人的には)紙の本の方が目が楽なような気がするからです。
では、電子書籍の未来はどうなるのでしょう?
「伸びしろ十分」と考えて将来性のある市場なのか? それとも、縮小はしないものの大した伸びが期待できない市場なのか?
最終的には、出版社とリアル書店がキャスティングボードを握っていると私は考えています。
「活字文化」を維持・発展させていくという目的においては、紙の書籍も電子書籍も共通しています。
決して、対立するものではありません。
また、先般も書いたように、書籍作成における出版社の役割は極めて重要なものであり、出版社なしでクオリティーの高い書籍を出すことはほとんど不可能だと考えます。
出版社、電子書籍提供業者(Amazonや楽天)、さらにはリアル書店の三者が力を合わせて工夫をしていくことが「活字文化」を守る上で必須ではないかと考えます。
そういえば、かつて、Amazon.com で買った米国のKindle端末では、文字だけでなく音声も出てきたのに感激しました。値段を安くするだけでなく、こういう付加価値を付けるのも一つの手段でしょう。
中小リアル書店は品揃えが限られています。
特に地方だと大型書店が少ないので、電子端末を販売して手数料を貰うというビジネスもアリだと思います。機械に弱い人たちのために、ダウンロードサービスをしてフィーを取ってもいいでしょう。
パイ全体が縮小している中で陣取り合戦に尽力するのではなく、協力してパイ全体の拡大に力を注いでいただきたいというのが、自他共に「無類の本好き」と認める私の切なる願いであります。
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年4月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。