全米初!NYが居住者を対象に公立大学の授業料を免除へ

安田 佐和子

2016年の米大統領選挙で善戦したバーニー・サンダース上院議員の魂が、出身地であるニューヨーク州で引き継がれました。

全米で初めて、公立大学の授業料免除を決定したのです。NY州のクオモ知事(民主党)が公立大学の無料化を提案してから3ヵ月後、議会が予算案を可決し晴れて”エクセルシオール・スカラーシップ(Excelsior Scholarship)”が設立され、今年の秋に始まる新学期からアメリカ人や永住権保持者、難民などの居住者を対象に4年制大学の授業料を負担します。ちなみにエクセルシオールとは、NY州の標語で「さらなる向上」という意味です。

具体的にはNY州立大学(SUNY)で6,470ドル×4年=25,880ドルNY市立大学(CUNY)で4,350ドル×4年=17,400ドルが免除される運びとなり、学生ローンの負担がグッと軽くなること間違いなし。と言いますのも、授業料以外はの諸経費は自己負担ですから、全てが無料化されるわけではないのですよ。例えばマンハッタンから北へ車で3時間の距離に位置するSUNYオールバニ校なら、学生寮の費用や教科書代などで学生寮の費用で12,590ドル、入学費や受講料その他経費で1,590ドル、教科書その他に1,000ドル掛かるんですって。CUNYならNY市内なので好きな場所に住めますが家賃だけで年間10,386ドル、食費で3,283ドルとなる見通しです。

オードリー・ヘップバーンのこのセリフを思い出す?


(出所:Attn

ただし、エクセルシオール・スカラーシップを受けるには条件を満たさなければなりません。まず家族の年間世帯収入が挙げられ、2017年は10万ドル以下が対象となります。ただし2018年には11万ドルへ、2019年は12.5万ドルへ引き上げていく方針です。

またクエクセルシオール・スカラーシップで授業料が免除された年の分だけ、NY州に居住しなければいけません。無事卒業した学生であれば、NY州での就職がマストというわけです。

履修単位も決められており、年間で30単位を取得しなければ奨学金を受け取る資格を失う羽目になります。

不法移民はもちろん対象外ですが、居住者年齢制限はありません。事前に低所得者層の学生を対象としたPell Grantと呼ばれる連邦政府の奨学金制度、あるいはNY授業料補助金制度といった返済義務のない奨学金制度が認められた学生は、まずそこから授業料を捻出。残りは、エクセルシオール・スカラーシップが負担します。

クォモ州知事が「NY州では750万もの雇用を抱えるが、そのうち7割は大卒の教育が必要だ」と発言した通り、大卒でなければ就職しづらい環境になってきました。大卒の割合がニーズに合わせて高まる一方、授業料は高騰を続け、学生ローンの負担が問題視されているのはご周知の通りです。

2o10年のNY州知事選では、クリントン元大統領がクオモ氏を応援。


(出所:Andy /Flickr)

なぜ今、クオモ州知事が決断したのか?ヒラリー・クリントン陣営に近い金融市場関係者いわく「クオモ州知事は2020年を見据えている」ためだといいます。民主党は足元、全国委員会委員長を選出するにも左寄りリベラルのサンダース議員支持派と中立寄りのクリントン元支持派が対立するなど足並みがそろわず、挙党体制に程遠い。指導者不足のなか、クオモ州知事が虎視眈々と空席を埋めるべくまずはプログレッシブに歩み寄ったというわけです。

仮にクォモ州知事が2020年に出馬すれば、トランプ候補VSクリントン候補に続き2回連続でNY対決となります。果たして、自由の女神は自分の庭での戦いを再び許容するのでしょうか?

(カバー写真:marc thiele/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2017年4月11日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。