センサー付きの服が高齢者を救う

先日の記事「3Dフードプリンタが高齢者を救う」で高齢社会に対応する研究開発が「食の分野」でも進められていることを紹介した。今日はその続きで、「衣の分野」での進展について。

電極を付けた服を着ることで、心拍数や筋電(筋肉の活動電位)などの生体情報を常時モニターできる。NTTが開発したウェアラブルセンサーが実例で、2015年には米国のインディカーレースでドライバーを観察するのに用いられた。

科学技術振興機構の助成で東京大学の染谷隆夫教授が実施した「生体調和エレクトロニクス」も同様の研究である。この研究では、分子性ナノ材料を用いて細胞に接する生体プローブを実現し、細胞からの微細な電気信号を測定することを目指した。

染谷教授はこの技術を高齢者の健康管理に応用しようと、国際産学連携「日本-スウェーデン共同研究」に応募し採択された。「皮膚貼り付け型センサーによる高齢者健康状態の連続モニタリング」プロジェクトは、高齢者の健康状態をウェアラブルなセンサーでモニタリングする技術を実環境で実証しようとしている。健康状態の連続モニターで高齢者の生活の質(QoL)が向上することを、採択に関与した者として期待する。

NTTのセンサーも粕谷教授のものも、測定した生体情報はスマートフォンに転送され、さらにスマートフォンから医療機関などに送られる。センサーから医療機関に直接送信するには大きなバッテリが必要になるが、スマートフォンを介すことで避けられるからだ。他方、スマートフォンを持っていなければ連続モニタリングは不可能になる。スマートフォン必携という点が、携帯を忘れがちな高齢者を対象とした場合には課題になる。特に、認知症が進行した場合などには役立たない恐れがある。街中に設置したアクセスポイントの側を通過する都度、生体情報を一気に送信するといった代替案もあるが、都市として整備されるまで実用に供せないという問題が残る。

この技術では、センサー自体だけでなく、サービス化、システム化を展望した研究開発が求められている。