細野さんが静岡知事に転身なら、一皮むけるかモナ

国会質問に立つ細野氏(細野氏ブログより:編集部)

PV狙いあからさまとはいえ(苦笑)、細野さんの古傷に塩を塗るようなタイトル付けをしてしまって恐縮です。が、中身は至ってマジメに書いたつもりなのでご容赦いただければ幸いです(汗)

代表代行辞任  静岡知事選との関連が取りざた

ここ1か月、宅配危機やら野球やら、ほかの話を書いていたので、なにげに政治ネタを書くのは1か月ぶり。例年、「新党誕生の季節」となる12月にも分裂しなかった民進党はここにきて地殻変動が起き始めた。長島氏が今週初め正式に離党し、そして一昨日(4月13日)は細野氏が代表代行を辞任した。ちょうど、お二人ともアゴラでブログを掲載している。

長島昭久「独立宣言」―真の保守をめざして(長島氏エントリー)

代表代行辞任の理由(細野氏エントリー)

そして、細野氏の去就をめぐっては、3月から静岡県知事転出構想が報じられている。前回までの選挙で、民進党が支援してきた現職の川勝平太知事といえば、3選を目指して出馬するかを明言しておらず、しかも「投票率が5割を切ったら辞職する」などと物議をかもす発言も飛び出したばかり。やる気があるのか、ないのか現職知事が「炎上芸」を見せている中で、細野氏の代表代行辞任だ。知事選との関連が憶測を呼ぶのは当然だった。

ご本人は辞任会見直後に出演したフジテレビのネット番組で、三浦瑠麗氏のインタビューに対し出馬を否定。側近議員の間でも「知事選には出ないだろう」という見方が支配的だと聞く。

知事転身が「悪くない」と思うワケ

しかし、個人的には、川勝氏が今後出馬せず、細野氏が転身するのは悪いことではないと思う。今回の辞任に対する批判で最も多いのが「自分で蓮舫氏を代表に担ぎ上げておきながら、途中で放り投げて無責任」というものだ。

それは確かに私もそう思うが、一度国会から退き、知事に転身するのであれば、ある種の「リセット」効果をもたらすことができる(当然知事選で勝たなければ意味がないが)。

そのリセットも10年前ならネガティブな色合いが強かった。いわば、国会議員から知事、政令市長への転身は「都落ち」扱いだった。ところが、大阪維新の会が誕生したのを機に一変する。知事や政令市の市長が地域政党を率いて国政政党にローカルレベルで互角以上の存在になり、中央政局に一定の影響を与えるような新しい事例も出てきた。東京でも、自民党で安倍首相や執行部に冷遇された小池氏が都知事選に打って出て、自民党の候補に大勝。夏の都議選では、「小池新党」の第1党躍進が有力視されている(もっとも、小池氏の劇場型都政運営は人気は高いものの、政局的な色が強く、豊洲市場問題の混乱が目立っているが…)。

とはいえ、細野氏も、自民一強時代の野党にいる限りは、どう頑張っても閣僚経験を積み、行政手腕をアピールするチャンスは絶望的にない。去年、都知事選の候補者で二重国籍問題が発覚する前の蓮舫氏の名前が上がった際、筆者は、都政に転出することは「悪くない」と提起したが(今思えば実現しなくてよかった、、、苦笑)、その時も述べたように、民進党の政治家たちが国民の信頼を取り戻せないのは、政権担当能力への疑義を払拭できないからだ。

しかし、蓮舫氏の都政転身説のときにも指摘したように「国政のひな形」として県政マネジメントで成果を残すことができれば、国政復帰と、政権を狙える野党への再建を任せられるリーダーとして「待望論」が出てくる可能性はある。知事として実績を積んで議会への求心力を増せば、近年の大阪や愛知にみられるように「地域政党」的な独自の政治勢力を築いて、国政復帰・野党再編の足場にする選択肢も出てこよう。

もちろん細野氏も民主党政権時代の閣僚だった。「3・11」当時は総理補佐官で、大臣ほどの重責ではないものの、やはり民主党政権の結果責任は背負っており、厳しい目は注がれ続ける。知事に転身できたとしても、菅政権が「3・11」対応で地元に残したアノ問題に向き合わなければならない。浜岡原発の再稼動である。

“細野知事”は浜岡にどう向き合うのか

今回の知事選でも浜岡原発の再稼動は、重要な争点になる。毎日新聞が昨年5月、川勝知事と地元11市町の首長に行ったアンケート取材では、全員が再稼働に賛成の意思を示さなかった(参照記事)。肝心の細野氏本人の原発政策はというと、このようなものらしい(本人サイトより)。

エネルギー危機を国家プロジェクトで乗り越える

エネルギー危機を乗り越えるため、地熱、風力、海洋エネルギー、太陽光などの再生可能エネルギーを育てます。 原発事故を経験した日本だからこそ、原子力産業を安全環境産業に転換し、廃炉、除染、安全な運転、そして使用済み燃料の処理で世界に貢献するべきです。

一言でいうと、自然エネルギーへの転換・脱原発志向がベースでありつつも、「安全な運転」の文言が入っているように再稼動も含めて現実的に進めていこうという姿勢は垣間見られる。なので、少なくとも廃炉のような極論はまず言うまい。

ただ、地元世論も反対か慎重が大勢だろうから、選挙戦術的には再稼働反対を明言する候補者が「利口」なのは確かだが、細野氏の「本音」を推察するなら、国に最終責任を負っかぶせて賢くスルーして選挙をしのぎ、当選後に再稼働問題にしっかり向き合うというのが現実的なシナリオになるのではないだろうか。

「勝負師」に生まれ変われるか

これまでの細野さんは、党内で一定の待望論があっただけでなく民進党が「嫌いではない」中間的な有権者にとっても、リーダー候補としてポジティブなイメージもあった。が、そうした反面、率直に言って、昨年の代表選出馬見送りに代表されるように「勝負どころで振り切れない」という評価が定着しつつあるように見える。

今回の代表代行を辞したタイミングについても、「良くも悪くも機を見るに敏で、長島氏の離党表明の前なら表明しなかったのではないか」と、やや意地悪な評価も党内外で聞こえてきそうな気がする。

細野氏の展望に関しては、国政に残って支持基盤の拡大など力を蓄え、野党再編を見極めるという順当すぎるシナリオが最もリスクが少ない。しかし、それだとリスクや勝負を極力回避する「計算尽く」との評価が染み付いてしまう。

もし、知事転身、浜岡再稼働という相応のリスクを取る引き換えに、再稼働問題に道筋をつける…、あるいは行政手腕において、県都・静岡市が政令市初の70万人割れするような停滞から、巻き返すような成果を生み出す….2期ほど知事をやって結果を残せば「細野は勝負強くなった上に仕事できるじゃん」と、国民の評価もそれなりに変わるのではないだろうか。

日本の知事は、47都道府県の知事の半数超が官僚出身であることからも分かるように、これまでは明治期の中央派遣の「県令」の名残りや名ばかりの地方分権を感じさせた。一方で、2000年の地方分権一括法施行により、国からの機関委任事務が廃止されたのを機に変わり始め、この10年で先述した維新の会の橋下氏や松井氏のように地域政党、国政政党を率いるような強いリーダーも出現。州知事出身の大統領がいるアメリカのように、地方行政トップの経験を生かして国政トップを目指す流れが、もっと強くなってもいいのではないだろうか。

実際には、細野氏は国政にとどまる可能性が高いだろう。しかし、国政に残るにせよ、県政に一時転身するにせよ、リスクをとって大きなリターンを狙う「勝負師」に生まれ変わらないと、この「野党最弱時代」にあっては総理の座に近づく奇跡は起こりようがない。

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新田 哲史
ワニブックス
2016-12-08

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