東京がサイバー攻撃の集中砲火を浴びても大丈夫 ? --- 鈴木 隼人

2020年東京五輪を前にサイバーセキュリティーは万全か?(写真ACより:編集部)

サイバー攻撃とはどのようなものでしょうか?
そして、私たちの生活にどう関係しているのでしょうか?

たまに、芸能人のSNSに他人が不正にログインして写真を覗き見られた、というニュースが流れていたりしますね。
また、アメリカの大統領選挙にロシアがサイバー上で介入した、というニュースも記憶に新しいところです。

しかし、いずれの事例もターゲットは芸能人や国レベルの話で、私たちの生活には関係ない、そんなふうに思っていませんか?

でも実は、サイバー攻撃の脅威は私たちの身近に迫っているんです。
例えば強盗。

銀行やコンビニなどで店員の方を襲い、現金を奪って逃げる凶悪犯罪で、日本でも年に数回は強盗事件のニュースを聞きますね。
この強盗、最近は手口が高度化しつつあり、みなさんの銀行口座をサイバー上で狙ってくるケースが増えているそうです。

例えば銀行システムに侵入して、1口座あたり100円ずつ抜き出していくと、それを1億人に対して実行すれば、犯人は100億円ものお金を強奪できてしまいます。

しかも、被害者の私たちは、100円くらいなら残高が減っていても気付かないことの方が多いのではないでしょうか?

2020年、日本はオリンピック・パラリンピックの開催国になります。2012年にイギリスで開催されたロンドン五輪では、なんと2億件ものサイバー攻撃を受けたそうです。

もし、東京がサイバー攻撃の集中砲火を浴びたらどうなるでしょう?

電車の運行システムが被害を受けた場合、電車が動かなくなってしまうかもしれません。
電力の送電網が被害を受けた場合、停電になってしまうかもしれません。

停電が長引けば病院の予備電源が枯渇し、人工呼吸器を付けている患者さんが身の危険に晒されるかもしれません。
五輪会場や近辺が停電し、強奪事件が起きる可能性だって否定できません。

では、そうしたリスクに対し、備えはどうなっているのでしょうか? 十分な対応はできているのでしょうか?

残念ながら、我が国のサイバーセキュリティは十分とは言えない状況にあると言われています。
2015年には日本年金機構のサーバーが外部から不正アクセスを受け、年金加入者の個人情報約125万件流出する事件が起きました。
企業でも、ホームページの改ざん、個人情報流出などの被害が後を絶ちません。

最近流行しているランサムウェアというウイルスに侵されると、データに鍵がかけられて読み込むことができなくなってしまいます。ロックを解除するために身代金を要求され、その被害額は年間数十億円にもなると言われています。

そこで、国や産業界などにおけるサイバーセキュリティの抜本的な強化が求められています。
このたび設立し、私が中心メンバーとして運営に携わっている「サイバーセキュリティ対策推進議員連盟」では、サイバーセキュリティの強化に向けて幅広く対応策を検討していくこととしています。4月12日には議連の総会を開催し、実質的な検討をスタートしました=写真=。

最大の問題は、セキュリティ対策の必要性が一般に理解されていないことです。
自社の情報が漏洩していてもそのことに気付かないケースも多いと言われていますし、セキュリティの重要性に気付くのは問題が発覚して社会的な信用を失ってからのことが多いようです。

また、人材不足も大きな問題です。
現在、現場と経営をつなぐ中間層のサイバーセキュリティ人材が圧倒的に不足しています。
一般にセキュリティ対策の重要性が浸透していないのは、この中間層の人材が足りず、経営層に対策の重要性を十分に説明できていないのも一因です。

2020年の東京五輪まで、私たちに残された時間は3年しかありません。
もちろん、2020年はゴールではありません。しかし、五輪開催にあわせて東京がサイバー攻撃の集中砲火を浴びることは間違いなく、万全の対策を講じることは不可欠です。

これらの課題をはじめ、我が国に対するサイバー攻撃への総合的な対策について、サイバーセキュリティ議連を中心とし、夏までにまとめていくこととしています。

鈴木隼人 衆議院議員(自由民主党、比例東京)
プロフィール
1977年生まれ。東京大学卒業、東京大学大学院修了、経済産業省勤務を経て、2014年の衆院選で初当選。「若者の政治参加検討チーム」発起人、「認知症予防の会」代表、「育menサミット」代表。
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