こんばんは。新宿区議会議員の伊藤陽平です。
本日のテーマは、地方創生の目玉でもある日本版CCRCです。
こちらの記事もご参考に↓
高齢者の“大移住”が始まる!?~検証・日本版CCRC~ – NHK クローズアップ現代+
まず、CCRCとは、「Continuing Care Retirement Community」の略です。
高齢者が地方へ退職後に移り住み、地域社会で健康に暮らしていけるよう、地域づくりを行う事業のことです。
今後、東京圏でも高齢化が進むことになりますが、家賃などの生活コストが高額になってしまい経済的な負担が大きいと言われています。
そこで、家賃が低い地方へ移住することで、生活コストを抑え、豊かな暮らしの実現を目指します。
医療や介護が必要な高齢者が地方へ移住するわけではありません。
地域コミュニティで活動し、生涯学習やスポーツを楽しみ、健康を維持するアクティブシニアを想定した事業です。
そして、高齢者のためだけではなく、地方の雇用にも影響するため、現役世代に対する支援も兼ねた事業になるとも言われています。
東京圏、地方、老若男女まで幅広くメリットのある事業になることが期待されています。
実は20年以上前から先行事例があり、福岡県朝倉市では日本版CCRCの取り組みが行われてきました。
理想を抱いて移住をされた方もいらっしゃいましたが、移住者は集まりませんでした。
そのため、事業者も集まらず、想定していたサービスが受けられなかったそうです。
先ほどご紹介させていただいた「クローズアップ現代+」の記事より引用
前田幸保さん
「何でもそろっているから安心して住めると、ユートピアという気持ちで過ごせるまちという雰囲気があった。」〜〜
前田幸保さん
「ユートピア的な構想が半分でも実現すればいい。
ところが1~2割で終わってしまった。」〜〜
前田幸保さん
「行政が、ディベロッパーが、人が住みやすいまちをつくってくれるという考えは、これはちょっと間違っているのではないかという印象を私は強くしました。」
海外でのCCRCの場合は、経済的に豊かな層に向けたものです。
地域で提供されるサービスも顧客のニーズに基づいたものになりますし、さらに現役世代へは仕事を通じてお金が巡り、地域の活性化にもつながることになるでしょう。
交付金を期待して開発が行われたとしても、行政によって描かれたビジョンで、ユートピアを実現するのは難しいのかもしれません。
また、私が日本版CCRCを調査をしようと考えたきっかけの一つは、特別区でも議論が行われる可能性を感じたからです。
ちょうど近隣の杉並区で、日本版CCRCに先行して取り組みが行われています。
南伊豆町と連携して特別養護老人ホームを建設し、日本版CCRCを実現を目指す事業がスタートしています。
実は、昨年の東京都知事選挙に出馬されていた増田寛也氏が、杉並区顧問として推進されている事業でもあります。
現地を視察されていたそうです↓
元総務大臣・増田氏 南伊豆町の事業視察 - 伊豆新聞
増田氏が座長として「消滅可能性都市」など様々な問題提起を行なわれていた日本創成会議でも、日本版CCRC構想が提唱されており、大変思い入れの深い事業の一つだと言えます。
増田氏といえば、東京税の話もありますが、果たして都民のためになる事業かは、改めて結論を出したいと思います。
渡瀬さんのブログもご参考に↓
「首都消滅か?」、増田寛也推薦という東京都民への背信行為
他にはリノベーションまちづくりでも有名な北九州市では、空き家をリノベーションすることで高齢者の住居を確保するという取り組みも始まっていますし、様々な可能性を考えていく必要がありそうです。
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東京圏の高齢者福祉のあり方に大きく関わる事業として、私も議会で何かしらの提言をしなければならないテーマだと考えています。
現状ではネガティブなご意見もいただいております。
地方在住の知人からは、
「東京は、地方に負担を押し付けてばかりだ。」
と、ご意見をいただいたこともあります。
一方で都民の知人からは、
「東京のお金が地方へ流出するからやるべきではない。」
というご意見もいただきました。
また、過去の事例のように、ユートピアだと信じて地方へ移住しても期待通りの満足度が得られないということになっては本末転倒です。
一見高齢者を対象とした事業のように見えますが、東京圏の子どもや現役世代に本当にメリットがあるのかも見極めなければなりませんし、限りある税の使い道として良いものなのか議論が必要です。
まずは、杉並区の事例について詳しく調査し、改めて結論を出し議会の提言へつなげてまいります。
それでは本日はこの辺で。