私自身は衆議院選挙では小選挙区制選挙しか経験していないので、小選挙区制度がいいのか中選挙区制度がいいのかを判断する中立公正で、的確な判断基準を持ち合わせていないのだが、経験的に小選挙区制度の欠陥なり不都合はそれなりに分かっているつもりである。
小選挙区制選挙は、当選の可能性が高い現職の議員や有力候補者には実に都合のいい選挙だが、無名の新人にとっては大体は不利に働く選挙制度である。小選挙区制選挙で当選した国会議員は何としてもこの制度にしがみつこうとするだろうから、小選挙区制選挙を中選挙区制選挙に戻すなどということは殆ど不可能なように見える。
私は、小選挙区制選挙のために既に自民党の現職議員がいる選挙区からの立候補を断念し、自民党以外の政党から立候補して当選した有能な保守政治家を何人も見てきたから、有為な新しい人材を国会に送り出すための選挙制度としては小選挙区制度はどうも芳しくないな、とかねてから思ってきたのだが、ここに来て小選挙区制度の不具合が新たな形で顕在化してきたようである。
1票の価値の平等を求めようとするとどうしてもそうならざるを得ないのだが、いつまでこんなことを続けなければならないのだろうか、と疑問になってくる。全国300の小選挙区の内約3分の1に近い97の選挙区で区割りの見直しが行われるという。
国会議員は国民の代表者であり一部地域の代弁者ではないという建前はそのとおりなのだが、しかし、有権者、選挙民と国会議員の関係がそんなに簡単に切り離されていいのだろうか、という疑問が湧いてくる。
いやあ、この選挙区の新しい区割りについてはあちらこちらから悲鳴が上がってくるだろうな、と思わざるを得ない。それこそ、現職の国会議員の間から、こんな風に区割りを変えなければならないのだったら、いっそ小選挙区制を止めて中選挙区制に戻しましょうよ、という声が上がってもおかしくない。
人口の減少傾向には歯止めがない、いずれ日本の人口は9000万人台になるだろう、大都市圏への人口集中と地方の過疎化は止めようがない、1票の価値の平等を求める限り、そのうちにしょっちゅう選挙区の区割りの変更を考えざるを得なくなるぞ、などということを考えると、やはり小選挙区制選挙は早晩持たなくなる。
やはり、小選挙区制選挙は止めましょうよ。
多分、次の衆議院選挙かその次の選挙が終わったあたりから、中選挙区制選挙に変えようという話が本格化するはずである。
とりあえず、私が口火を切っておく。
編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2017年4月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。