【映画評】バーニング・オーシャン

メキシコ湾沖80キロに位置する海底油田施設・ディープウォーター・ホライゾン。石油会社が、スケジュールの遅れを理由に掘削再開を迫ったことから工事が強行され、天然ガスへの引火と大爆発による大事故が発生する。作業員126名がいるディープウォーター・ホライゾンはたちまち炎に包まれた。チーフ技師のマイクは、一人でも多くの作業員の命を救い、被害拡大を食い止めながら、必死で脱出方法を探るが…。

2010年4月に起こったメキシコ湾原油流出事故を描いた実録ディザスター・ムービー「バーニング・オーシャン」。巨大な海底油田施設・ディープウォーター・ホライゾンで発生した引火・爆発の大事故は、世界最大級の人災と呼ばれ、多数の死者・負傷者を出したこと、周辺の自然環境や住民の生活に甚大な被害を与えたことで知られる。主人公を熱演するマーク・ウォールバーグは、ピーター・バーグ監督とは、ネイビーシールズの兵士がタリバンから追い詰められるサバイバル・アクション「ローン・サバイバー」で組んでいるし、公開待機中のボストンマラソン爆弾テロ事件を扱った実録もの「パトリオット・デイ」でもタッグを組んでいて、このコンビは、実話の社会派アクションがトレードマークになりつつある。本作で描かれた事故は、営利優先の石油会社の幹部が、工事の遅れを取り戻すため、安全テストを省略して工事の強行稼働を迫ったことが発端。巨大な石油掘削施設での、泥水噴射、原油逆流、ガス引火、大爆発と、次々に起こる大災害の恐怖を臨場感たっぷりに描いている。

ただ、ディープウォーター・ホライゾンを忠実に再現した巨大セットや、決死の脱出劇は確かに迫力たっぷりで見応えがあるが、石油掘削現場という一般人がほとんど知らない場所での災害のために、どうしても説明パートが多く、ディザスター・ムービーとしての訴求力が削がれたことは否めない。映画は、事実を追うのに精一杯で、人間の内面に迫るドラマとしての魅力には欠けてしまった。それでも、この大事故の原因が、安全より利益を優先させた結果の大惨事だったことを思うとき、遠い場所で起こった過去の出来事というだけでは片づけられない危機感が浮かび上がってくる。実際に事故に遭った人々が写真で登場し、彼らのその後を紹介するエンドロールが、強く印象に残る。
【65点】
(原題「DEEPWATER HORIZON」)
(アメリカ/ピーター・バーグ監督/マーク・ウォールバーグ、カート・ラッセル、ケイト・ハドソン、他)
(スペクタクル度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年4月22日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式Facebookページから)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。