中古ワンルームは「狭い」「古い」「安い」が人気化する

今年の3月に購入した中古ワンルームマンションは京急沿線の大田区にあり、広さは16.8平米、築年数30年近い「3点ユニット」の物件でした。3点ユニットとは、洗面・バス・トイレが1つのユニットにまとまっている古いマンションに多い仕様です。

人気がなく賃貸が付きにくいといわれる3点ユニットですが、東京23区では逆に「お宝ワンルーム」となる可能性があるという話を聞きました。その理由は区が定めるワンルーム規制条例です。東京23区ではすべての区に条例や指導要綱が存在し、ワンルームマンションの最低専有面積はほとんどの区が「25平米以上」になっています。狭小のワンルームマンションは新築で供給できなくなり希少性が高まっているのです。

一方で需要は拡大しています。その理由は3つあります。若年層の低所得化、外国人居住者の増加、そして高齢化です。

賃金が伸びず、家賃にかけるお金を節約したい層にとって、3点ユニットの狭小のワンルームマンションは、利便性が高く、家賃を抑えることができる魅力的な賃貸物件なのです。ワンルームマンションの家賃は東京23区では5万円~10万円がレンジですが、バス・トイレ別で20平米以上の築浅物件になると、家賃が10万円に近づいていきます。3点ユニットの20平米以下の物件にすれば、6万円前後でも利便性の高い場所に物件が見つかります。

また外国人も比較的裕福な留学生が、ワンルームに住むケースが増えているそうです。さらに、今後は高齢の単身者が利便性を求めて入居することも多くなりそうです。

私が買った物件は家賃が66,000円。管理組合費、修繕積立金、管理会社費用を差し引いた手取りの家賃から計算した利回り(ネット)は5.8%と比較的高いレベルです。法人契約になっているので、当面は空室リスクは低そうです。

経年劣化による家賃の下落や、築年数が古いことによる出口(売却)の難しさなどを懸念していましたが、供給の絞り込みを考慮すると、むしろこのような物件の方が家賃の下落リスクも低く、出口も現金での買い手が見つかりそうです。

築古ワンルーム物件は、中古ワンルーム販売専業の会社が、例えばワンルームダイレクトメールのようなメールマガジンで毎週情報提供していますが、メール配信と同時に問い合わせが入る人気になっています。

本当に新築の狭小ワンルームの建設が東京23区でなくなってしまうと、需給関係から価格が1000万円程度の中古物件の人気が高まりそうです。規制が生んだ市場の「歪み」といえます。数年後にはマーケットから、築古狭小物件がなくなっているかもしれません。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2017年5月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。