ロシア革命と「ファティマの予言」

今年はロシア革命(10月革命)から100年目を迎える。一方、このコラム欄でも紹介済みだが、ポルトガルの小さな村ファティマで聖母マリアが降臨し、有名な3つの予言を3人の羊飼いに託してから今年5月13日で同じように100年目を迎える。

前者は無神論、唯物論の世界観を土台とした人類史上初の社会主義革命である一方、後者は「神に帰りなさい」と語る聖母マリアのとりなしの祈りを中心に、神を否定する共産主義世界の出現を預言し、警告を発している。
全く相反する両者は同じ年に出現しているのだ。単なる偶然か、それとも両者に関連があるのだろうか。

先ず、「ロシア革命」と「ファティマの予言」に共通点はあるのかを調べてみる。世界観、歴史観は明らかに異なるが、あるのだ。アブラハムから派生した唯一神を信仰するユダヤ民族が両者の登場に重要な役割を果たしているのだ。

キリスト教はユダヤ教から派生した。イエスはユダヤ人であり、聖母マリアはイエスの母親だ。一方、「ロシアの革命」の主導者、ウラジーミル・レーニン自身はロシア人だったが、彼の側近にはユダヤ系出身者が多数を占めていた。

ちなみに、レーニンの母親はドイツ・ユダヤ系だからユダヤ系ロシア人だ、ともいわれる。カール・マルクスもユダヤ系出身者だったことは良く知られている。すなわち、マルクス・レーニン主義と呼ばれる社会主義思想はユダヤ系出身者によって構築されたわけだ。スターリンがその後、多くのユダヤ人指導者を粛清したのはユダヤ人の影響を抹殺する狙いがあったと言われている。

このコラム欄でも一度紹介したが、ノーベル文学賞受賞者のソルジェニーツィンは「200年生きて」という歴史書の中でボリシュヴィキ革命におけるユダヤ人の役割について書いている(200年とは1795年から1995年の間)。
ソルジェニーツィンは「ユダヤ人は1917年革命の関与について否定し、『彼らは本当のユダヤ人ではなく、背教者(otshchepentsy)だった』と弁明する。ユダヤ人の主張を認めるなら、同じ論理でボリシュヴィキ革命を主導したロシア人は本当のロシア人ではなかったと主張できる」と書いている。

ユダヤ人のイエスは2000年前、ユダヤ社会で指導的立場にあった聖職者や指導者から迫害され、十字架で処刑された。「復活のイエス」からキリスト教が誕生し、その教えは多くの殉教の歴史を経ながら古代ローマ帝国で公認宗教となった。しかし1054年にキリスト教は東西両教会に分裂(大シスマ)。現在のロシアには東方教会が伝達され、ロシア正教会が広がっていった。
そして1917年、ロシアで唯物思想の無神論国家を目指す社会主義革命が発生した。その背後に、2000年前イエスを殺害したユダヤ民族の末裔たちの影響があったというわけだ(「ユダヤ民族とその『不愉快な事実』」2014年4月19日参考)。

一方、「ロシア革命」と同じ年の1917年5月、ポルトガルの小さな村ファティマに聖母マリアが3人の羊飼いの子供たちに現れ、3つの予言をした。その中で第2は「汚れなきマリアの魂の崇拝」といわれている内容だ。「地獄にいる無数の魂を救うためにも、私の汚れなき魂を崇拝しなければならない。私はロシアを汚れなき魂に奉納するために来る。もし私の願いが聞かれれば、ロシアは改心し、世界に平和が訪れる。もしそうでなかった場合、世界中に誤った教えが広がり、戦争、教会の迫害がさらに広がる。そして多数の民族が消滅する」というのだ((「ファティマの予言」2010年5月7日、8日、9日、10日参考)。

以上から、「ロシア革命」と「ファティマの予言」の間に密接な関連性があった、といった憶測が成り立つわけだ。神を否定する共産主義の出現に対し、聖母マリアが警告を発する。両者の背後に選民ユダヤ人が大きな影響を与えてきたのだ。

過去100年の歴史を想起すれば、共産主義世界がどのような冷酷な社会であったか、そして終焉を迎えたかをわれわれは目撃してきた。一方、「ファティマの予言」の土台となったキリスト教は世俗化の波に押され、教会は生命力を失い、聖職者は未成年者への性的虐待事件を犯し、信者たちは教会から背を向けていったのを見ている。

世界の歴史に大きな刻印を残した両者は今年、歴史的な節目を迎える。それが何を意味するのか、新しい革命が起き、新しい予言が囁かれるのだろうか。ひょっとしたら、新しい世界の秩序構築が始まるのかもしれない。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2017年5月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。